2015/10/12

脳卒中患者のリハ治療における筋力増強は十分実施できている?






臨床現場において、脳卒中患者のリハ治療における筋力増強は十分実施できているでしょうか。
リハ実施内容とその経過について具体的に述べているものがあった1)ので考えてみます。


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[対象と方法]発症後第14病日以内に入院した初発脳卒中患者(平均値4.6日,中央値1.5日)20人の下肢筋断面積を、CTを用いて5日以内・2週時・4週時・8週と経時的に測定した。対照群は以下の3群に分けられた。
・全介助群:入院から退院まで歩行不可能
・早期歩行自立群:2週間以内に歩行自立
・中間群:2週時まで歩行自立せず4週以上の歩行練習を実施
※各群ともに座位や歩行、機能訓練・ADL練習などの運動療法を原則40分/日(週5-6日)実施。
※歩行自立群や中間群では、集団で10分間の体操と起立着座20回+歩行や起立の自主練習指導(中間群では、退院時には起立着座100回/日以上、歩行2000m以上を行っていた)
[結果]早期歩行自立群では、下肢筋断面積に有意な低下はみられなかった。しかし、中間群や全介助群では、2週時点には入院時と比較して有意な低下を認めた。
この三群間の比較間では、それぞれの下肢筋断面積に統計学的な差を認め、麻痺側と非麻痺側間では差がみられなかった。
また、中間群では、その後4週時より下肢筋断面積の回復が見られたが、入院時の状態に戻るまでに8週間(約3倍の期間)を要した。



実際に臨床に従事されている方は、「これだけの内容を毎日やっていても筋力が落ちるのか!?」と、まず一番に感じるところであると思います。
そう思うのは、当たり前だと思います。
この報告のリハ実施量としては、現在は全国的にスタンダードか、それ以上の内容を実施している状況だからです(平均60分程度:言語聴覚療法を20分として差し引くと同程度)。

ここから参考になることは、
◎筋力低下をおこさせないためには早期歩行自立を獲得させることが重要
麻痺側下肢の筋力は非麻痺側と同程度に強化ができる
◎急性期入院時より、一日につき運動療法40分+自主練習で起立着座100回(歩行2000m)程度+集団10分と起立着座20回の十分な運動療法を実施していても筋力は落ちる
◎ただし、上記のような治療を実施していれば、8週間程度で入院前と同程度状態まで回復する。逆に、実施できていなければ、そのうち廃用症候群の影響が明らかになり、日常生活活動の回復が伸び悩む可能性がある。


どこの急性期病院も、一日のリハ実施患者数は非常に多い現状かと思います。
上記は当たり前のことを述べましたが、私たちは、短時間のリハ治療の中で、その大半の時間をベッドに患者を寝かした状態で経過させていないでしょうか。
発症当初は、脳浮腫・虚血性ペナンブラ・ディアスキシスの改善2)などの変化により、リハ実施有無にかかわらず自然回復の影響が否めません。
発症から順調に回復しているようにみえても、患者がベッド上で過ごす時間が長い日々が持続していれば、自然回復が落ち着いてきた頃には廃用症候群の影響が明かとなってきます。
2週間程経過した頃、患者さんの日常生活活動の回復が伸び悩むことが臨床では多々ありませんでしょうか。
上述の内容からもわかる通り、徐々に神経機能の回復よりも廃用症候群の影響が強くみられてきていると考えられる状態であり、これは当然の結果であるといえます。
特に、併存疾患を有する高齢者では、いったん廃用症候群をきたしてしまうと不可逆的になることも多く、結局は最終的な日常生活の到達レベルを落としてしまうこともあります(図1、2:イメージ図)。
廃用性筋力低下ADL改善過程イメージ図

神経機能回復と廃用症候群 天秤

患者さんに順調に回復してもらうためには、まずは、離床の安全性を確認しつつ、早期からこれ以上の十分な運動量の確保ができる状態を他職種と連携して確保する必要があるといえます。

では、どの程度の運動量を投与すれば良いのでしょうか?

具体的な量は以下をご参照ください。
筋力低下を予防するための運動量は?


[参考文献]
1)近藤克則,太田正:脳卒中早期リハビリテーション患者の下肢筋断面積の経時的変化-廃用性筋萎縮と回復過程-.リハビリテーション医学.1997;34(2):129-133.
2)Dombovy ML: Stroke: Clinical course and neurophysiological mechanisms of recovery. Clinical Reviews in Physical and Rehabilitation Medicine. 1991;2(17):171-188.


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