2016/01/21

Contarversive pushingの責任病巣と臨床症状~臨床評価から予後、治療方法について~






Contarversive pushing(以下pushing)とは、「座位や立位などで身体軸が麻痺側に傾斜し、自らの非麻痺側上下肢を床や座面を押すことに使用して、姿勢を正中にしようとする他者の介助に抵抗する特徴的な現象」のことです。

pushingは、上記のような症状からADLの自立が困難になることや介助量が大きくなることも多く、臨床治療上も難を要する場合が多いです。
そこで今回は、pushingの責任病巣、評価法、出現頻度、予後に関して述べ、臨床上よく使用する治療法を紹介します。



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■目次


 ▶責任病巣
 ▶評価方法
 ▶出現頻度
 ▶予後
 ▶治療方法
 ▶参考資料



責任病巣


様々な報告がありますが、Karnathら2)やJohannsenら3)は、視床後外側部病変、島後部、中心後回の皮質下の損傷で特異的に生じると報告しています。
Johannsen L(2007) pushing病巣
文献3より引用

Karnath HO(2005) pushing病巣
文献4より引用

姿勢定位に関する出力・入力のネットワークを形成するシステムの一部が損傷することでpushingが出現すると考えられており、病巣は多岐に渡ると考えられます。

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評価方法


clinical assessment Scale for Contraversive Pushing (以下SCP)が世界的にも有名であり、座位と立位で(1)麻痺側への傾斜、(2)非麻痺側上下肢の外転と伸展(押す現象)、(3)身体を他動的に正中位に戻した際の抵抗の出現の3項目の各点数を合計し、評価します。
pushingがない場合は0点、最重症は6点となります。
SCP 臨床評価スケール
簡単なスクリーニングとして、特徴的な兆候であるleg orientationの観察もあります。
これは、端座位で体幹が麻痺側に傾斜している際には下腿は正中となり、体幹が正中位になった際には、非麻痺側の下腿が外旋するといった反応です。(前庭神経障害例では、体幹が正中にあるときでも下腿は正中であることも確認されているので、鑑別もできるかと思います)

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出現頻度


対象群や判定スケールにより1.5~63%と幅があります。
Bacciniらは、SCPの各項目>0点(合計点では1.75点以上)のときに観察による臨床的判断と最も一致すると報告しており、これと同様の判定方法で行った阿部らは、1099例中156名(14.2%)程度であったと報告しています。

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予後


・意識障害、トレーニング困難例で回復に至らない
・若年で下肢麻痺が軽症なほどpushingが消失しやすい
・左半球損傷例と比較し、右半球損傷例では回復が遅延しやすい

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治療方法


pushingの出現メカニズムは未だ解明されていないため、確立された治療法はないです。
しかし、以下のような特徴が報告されており、参考になります。
・頭頚部の垂直位は保たれているが体幹のみ著しく麻痺側に傾斜している
=「前庭機能は保たれている」
・開眼状態では、垂直位の認識(自覚的視覚的垂直定位:SVV)は健常者に近いが、閉眼状態では垂直位の認識(自覚的身体的垂直定位:SPV)が非麻痺側に顕著に偏倚している。
=「視覚情報は比較的保たれている」
※SPVは非麻痺側に偏倚しているという報告もあるが、いずれの報告も十分な症例数で行われていないようです。
上記のうち、特に視覚代償が利用されることが多く、自己の直立姿勢を視覚的に認識させ、身体軸の垂直位からの逸脱を修正させる方法が推奨されています。

具体的には以下に示すような点に留意して治療を行いましょう。
・不安定な(支持基底面が狭い、可動関節が多い)状況で症状が顕著に生じることが多いため、まずは安定性がある状態から開始します。たとえば、臥位→座位→立位の順で進める、装具を使用して可動関節を減らすなど。pushingの重症例では、臥位で体位変換を行う場合などにも顕著に症状が生じることも多々あります。
・鏡や垂直な構造物(点滴棒や壁の模様などの垂直線)を目視し、体幹の傾斜を自己で確認し修正させます。
・非麻痺側方向への自発的なリーチングなどを利用し、垂直位を学習するために必要な感覚を反復して入力します。正中位までできれば、徐々に運動範囲を広げて正中位を越えて行えるように難易度を上げていきましょう。また、端座位の状態から非麻痺側の肘を座面につき、再度端座位に戻るような課題も有効です。
これらの方法は、介助を行う上でも押すこと自体を減らす目的で使用することも多いです。
介助を減らすことが目的であれば、押している面自体をなくす(手掌面や足底面がつかないようにする)ことや、移乗などはあえて麻痺側を行う、(過剰努力を招くが…)上肢を完全伸展位の状態に調整し引き込みを行わせるなどといった工夫もあります。
・立位や歩行を行う場合は、上記と同様の工夫や、壁側に肩を寄せるなどを行うと重心移動や麻痺側下肢の振り出しが行いやすいです。

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参考資料


1)原寛美,吉雄雅春:脳卒中理学療法の理論と技術.メジカルビュー社,東京,2013.
2)阿部浩明:Contraversive pushingと画像情報.理学療法ジャーナル.2010;9:749-756.
3)Karnath HO, Johannsen L, Broetz D, Küker W.: Posterior thalamic hemorrhage induces "pusher syndrome".Neurology. 2005;64(6):1014-9.
4)Johannsen L1, Broetz D, Naegele T, Karnath HO.: "Pusher syndrome" following cortical lesions that spare the thalamus. J Neurol. 2006;253(4):455-63.

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