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2016/01/25

脳卒中患者の能力は退院後に著しく低下する?!






脳卒中は、リハ医療によってかなりの機能回復が期待できるようになっています。

しかし、退院後の患者さんのADLは、退院時が同じ能力(ADL)であったとしても、極めて活動的であったり、逆に寝たきりになっていたりします。

では、なぜこのような違いが出てくるのでしょうか?

明確な答えはまだわかりませんが、私たちは、この違いや違いが出る要因に関する知見を得ることで、退院する患者さんに対して効果的な助言ができるのではないかと思います。

そこで、今回はこれに関して参考になる資料がありましたので、掲載させていただきます。



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■目次


 ▶論文紹介
 ▶退院時ADL自立度と退院後ADLの関係
 ▶退院後にADLが急速に低下する時期
 ▶退院後活動レベルを決定する要因


論文紹介


脳卒中発症後、リハ医療を受けて退院した患者210名の退院後から3年間の予後の調査と分析を行った論文です。
⇒1)中村隆一,長崎浩,天草万里編:脳卒中の機能評価と予後予測,医歯薬出版株式会社.2011
以下のような結果が得られました。

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退院時ADL自立度と退院後ADLの関係


退院後のADLの維持率は、退院時に自立していた群で101名中76名(75.2%)、要監視群で66名中39名(59.1%)、部分介助群で25名中3名(12%)でした。
つまり、退院後ADLの維持率は、退院時の自立度が高いほど良いと考えられます。

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退院後にADLが急速に低下する時期


生存分析を用い、退院時のADLを100%として経時的にその維持率の変化をみると、75%の患者がADLを維持できている期間は、退院時ADL自立群で25.1ヶ月、退院時ADL要監視または部分介助群では24.1ヶ月でした。
また、ADL維持率が50%まで低下するまでの期間は、退院時ADL自立群で33.9ヶ月、退院時ADL要監視または部分介助群では31.7ヶ月でした。

この結果より、退院後の2年間はある程度のADLが保たれるといえます。
しかし、退院から2-3年目程度の短期間の間に加速的にADLが低下していることがわかります。

さらに、この資料では数値によるデータは掲載されていませんでしたが、生存曲線のグラフからは、3年目頃には退院時に自立していた群も介助が必要であった群も、どちらもADLを維持している患者の割合は30%程度まで低下している結果となっていました。

つまり、退院後2-3年目の間で急激にADLが低下し、3年経過後にはADLは3割程度しか維持できていない(?)といえます。

この急速にADLが低下を認める時期に、いかにADLが下がらないようなリハを提供するかが重要であることがわかりますね。

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退院後活動レベルを決定する要因


また、この論文では、入院リハ医療を受けて退院した206名に対し、郵送によるアンケート方式でBarthel Index(BI)も評価しています。
そして、退院時BI点数から調査時BIの差を算出し、ADLが低下したか否かを判断しています。
解析データには、回答が得られ生存していた158名のデータが用いられました。

退院後のBIの変化(低下or非低下)を外的基準として数量化Ⅱ類を実施した結果、寄与率は30%であり、退院時BI、病前社会的適応状態(良、可または不良)、家族構成数、配偶者有無、性別が重要な予測因子であることがわかりました。
ADLが低下しやすい条件は、退院時BI95以下、病前社会的適応状態が可または不良、家族構成人数が本人を含んで5人以上、配偶者がいる場合、性別が女性でした。

これらの因子が退院後のADLに関与している理由は明らかではないですが、上記の結果から、「退院時のADLが低く、病前から社会的交流が狭い介助者が常にいるような方、特に女性の場合、退院後の活動レベルが低下するリスクは非常に高い」ということになります。

入院中にこのような患者さんを担当した場合は、退院時には患者さん本人だけではなく、ご家族の方も含めてADL低下のリスクが非常に高いことを認識していただき、ADLを落とさないような生活サポートの方法を具体的に指導しなくてはならないことがよくわかります。

また、社会的な交流をどのようにつくるかも重要な要素と思われます。


・・皆さんは、病院を退院した患者さんに出逢ったときになんとなく退院直前よりも能力が落ちているのでは?と思うような場面は経験したことがないでしょうか。

残念ながら、私はまだこのような場面を目の当たりにすることがあります・・
退院後の機能は維持しにくい

どのような指導を行えば、より長く良好なADLを維持していただけるのでしょうか?

患者さんを「人」として、「社会」として、全体的にとらえて指導を行うことの難しさをヒシヒシと感じます。

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Re: 今日の出来事

> MAKOに紹介してもらい、ページを拝見しました!すごくわかりやすく面白いと感じています!15年医療の現場で働き、今更聞けないこと、たくさんありますがおさらいができて助かります!
>
> このテーマですが、私はセラピストの目標管理能力の低さであると感じます。退院するまでに何が出来るかが焦点ではなく、この患者さんを一年後どう生活をさせているか?だと感じています。
> リハビリ室でセラピストにしてもらわないとリハビリではない!と言う患者が多く、びっくりしています!
> そうではなく、いかに患者自身で管理するべきか?考えるべきと思います。だから、回復期を退院する前には、自己管理方法を徹底して指導するべきと思いました!
> 今日、退院一年後の患者さんが一年後のFIMの測定に来られました!
> 点数が下がっていましたが、その原因は、患者の能力が発揮できず、入浴などできていたのにデイサービスを使用して介助してもらっているからです。
> せっかく医療で機能をあげられるから、活かすことを指導できないのは、やはり間違っていると感じました。
> だいぶ、私の愚痴っぽくなりましたが、内容は、自分の気持ちが整理でき、役立てさせていただいています。
>
> ありがとうございます。



やぎゅうさんへ

ご丁寧にコメントをいただきありがとうございます。
そして、ご紹介いただいたMAKOさんにおかれましても、本当にありがとうございます。

僕もやぎゅうさんのおっしゃる通りだと感じ、このNSCPTを開設しました。
医療は常に進歩しますが、それを「どのように臨床に落とし込んでいくか」、「患者さんの生活にうまく活用していけるか」は、研究結果の発表だけでは進歩していきません。臨床でそれが実践できなければ真の進歩とは言えません。よって、NSCPTはこの考えに賛同していただける臨床家の方の実際の臨床を積極的に発信し、色々な方のご意見の元で自分たち自身の臨床をより発展させ、それをサイトを見ていただける皆さんとシェアしていくことでさらなる臨床の発展を図る目的で運営しています。

大変貴重なご感想をいただきありがとうございます。


僕も今更聞けないと感じることはたくさんありますが、たかが自分が臨床を経験したレベルでは患者さんが生きた人生にそぐうようなリハは提供できないと最近は思うようになってきました。こう考えると、もしかしたら今更聞けないことなんてないかもしれませんね・・。



また、やぎゅうさんの患者さんがFIMの測定にこられた際に点数が下がっていた点とその解釈についても非常に勉強になりました。

退院後に介助していもらってしまって点数が下がっていくのはもちろんだと思いますが、介助してもらうようになってしまう原因を考えることが重要だと思います。これは、やはり患者さんご本人が入院リハ中にどれだけ自分自身のこととして目標を決めてリハを行なっているのかが非常に重要だと僕は思います。セラピストが機能的にどの程度まで良くなると想定(目標設定)して行なったリハでも、患者さん自身の目標と合致して患者さん自身が自主的にご自身の目標に向かっていかなければリハの意義は乏しくなってしまいます。僕が思うに、患者さんが退院された後に下がるFIM点数の幅は、セラピストの目標設定と患者さんの本当になりたかった状態との差だと思います。つまり、この差ができるだけ埋まるような介入方法が重要であり、差が埋めにくいと思った時の環境設定やセラピストの目標修正が重要だということを改めて感じさせていただいたコメントでした。

本当にありがとうございます。


このブログは最近更新頻度が少なくなっていますが、これからも継続して少しずつ更新していきますので、何卒宜しくお願い申し上げます。