2016/02/28

半側空間無視の臨床症状と観察による評価







■目次


 ▶半側空間無視とは?
 ▶日常生活上でよくみられる具体的な症状
 ▶発症頻度と予後
 ▶責任病巣
 ▶臨床症状の評価方法
 ▶参考資料



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半側空間無視とは?


 健常者では、左右の空間に対してほぼ均等に注意をはらい、そこにある物体を操作したり、その中を移動したりすることができます。しかし、脳損傷者では、この機能の一側が障害される症状を呈することがあり、これを半側空間無視とよびます。Heilmanらは、半側空間無視を「大脳半球病巣と反対側の刺激に対して、発見して報告したり、反応したり、その方向に向いたりすることが障害される病態」と定義しています。

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日常生活上でよくみられる具体的な症状


 高次脳機能障害学第2版 [ 石合純夫 ]より抜粋すると、左半側空間無視の場合は以下のような症状を認めることが多いです。

◎ベッドの上で頭部、眼球を右側方向へ向けている
◎正面を向いている場合でも、左側にある物や人に気付かない
◎声をかけても右側を探している
◎時計をみても左側に秒針がある場合に時刻がわからない
◎更衣の際には衣服の上下左右がわからずうまく着られない場合や右側だけ袖を通して放置している、左側の靴だけ履いていない
◎食事の際には左側のさらに手をつけなかったり、茶碗の中の左側だけが残ったりする
◎本や新聞を読む際には紙面の左側を見落とし、改行をうまく追えず意味がわからない
◎左側だけ髭が剃られていない
◎車椅子の左側のブレーキを止め忘れる、左側のフットプレートだけ足が乗っかったまま立ち上がろうとする
◎歩いている際に右方向ばかりに進み道に迷う、左側にある障害物や人にぶつかる

このように、半側空間無視では日常生活上で一側を無視するような多彩な症状を呈し、その程度は空間認知の神経回路の損傷程度でまちまちです。

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発症頻度と予後


 半側空間無視は、脳卒中患者の40~80%に発生し、右半球損傷、すなわち左半側空間無視の方が右半側空間無視と比較して発生頻度が高く、重症で長期に残存しやすいといわれています。また、(おおむね1ヵ月以上の)長期に残存する症例では、機能的予後は不良でADLを大きく阻害する因子となることが知られています。

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責任病巣


 半側空間無視は空間認知に関わるネットワークの損傷でその症状が出現するため、責任病巣は多岐に渡ります。ただ、特に半側空間無視を呈することが多い部位は、大脳皮質では、下頭頂小葉、前頭前野、前頭眼野、上側頭回、前部帯状回、島、皮質下では、視床枕、線状体、上丘およびこれらを結ぶ白質であり、これらが責任病巣として重要であると考えられています。
Nacheveらは主要部位を以下の図のようにまとめており、参考になります。
半側空間無視の責任病巣:Nachevらによる半側空間無視を呈する主要な大脳皮質部位

なお、半側空間無視は責任病巣から中大脳動脈領域の脳損傷時に発症しやすいですが、これらの病巣は姿勢定位のネットワークとも重複、隣接しているため、Contarversive pushing(いわゆるプッシング、プッシャー症候群)も併発することが多々あります。
評価を行う際には、Contarversive pushingも見落とさないように注意しましょう。
(関連記事)
Contarversive pushingの責任病巣と臨床症状~臨床評価から予後、治療方法について~

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臨床症状の評価方法


 半側空間無視の日常生活への影響の程度は重症度や残存機能により異なりますが、これを簡便かつ客観的に評価する方法としてCatherine Bergego Scale(CBS)がありましたので、紹介したいと思います。

CBS は、半側空間無視患者の日常生活上での問題点を抽出する評価法であり、観察による評価方法(観察評価法)と、患者自身が採点を行う評価方法(自己評価法)でその程度の評価を行います。また、両者の合計点を差し引くことで、検査者と患者の病識の解離の程度がわかるため、病態失認の程度も客観的に評価できます。

Catherine Bergego Scale(CBS)観察評価法

Catherine Bergego Scale(CBS)自己評価法

 「観察評価法の合計点」-「自己評価法の合計点」=「病態失認の程度」


CBSの特徴
以下のような特徴があるので、机上検査に加えて実施してみてもいいかと思います。

◎検者間信頼性は高い
 ⇒ただし、項目 3「皿の左側の食べ物を食べ忘れる」のみCohen’s κ=0.18と低値。その他の項目ではCohen’s κ=0.46~0.86と中等度~ほぼ完全一致、合計点ではICC =0.92とほぼ完全一致。
◎信頼性、妥当性に優れている
◎机上検査であるBIT、Bells Test、模写検査、音読課題と強い関連がある
◎ADLと強い関連がある
 ⇒Spearman 順位相関係数による相関は、FIM運動項目-0.85、認知項目-0.81、合計得点-0.88
◎BITなどの机上検査より感度が優れているため、軽度の半側空間無視も見落としにくい
 →BITの各項目や合計得点のカットオフ値を下回った患者は全体の 0~40%であったが、CBSの各項目や合計得点で1点以上であった患者は全体の23~77%であり、CBSの検出率は良好であった
 ※BITがわからない方は「行動性無視検査 Behavioural inattention test」をご覧ください。
◎観察による評価であるため繰り返し測定による学習の影響による点数の変化がない
◎患者への負担が少ない
◎直接的にADL上の問題点を抽出できるため、治療プログラムの立案や介入計画の立案に適している
◎半側空間無視患者に接する機会が少ない評価者や初学者の場合は評価が難しく、ある程度の臨床経験が必要



半側空間無視は、空間認知に関する神経回路の損傷により出現するため、臨床で症状を呈する症例と遭遇する機会は非常に多いです。

半側空間無視の有無はBITを用いて評価することが有名ですが、上記に記載したような症状で半側空間無視が疑わしい場合でもBITのような机上検査では「正常」と判断される場合があります。

そんなとき、どうしていますか?
これを使ってその程度を客観的に評価してみてはいかがでしょうか??

また、病態失認に関しても、私たち医療者はやみくもに病識を押し付けがちですが、患者さんと結果を共有することや実際に一緒に確認をしてみることで、徐々に解離を埋めていくことも可能になってくるのではないでしょうか。


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参考資料


1)長山洋史,水野勝広,他:日常生活上での半側無視評価法 Catherine BergegoScale の信頼性,妥当性の検討.総合リハ.2011;39(4):373-380.
2)高次脳機能障害学第2版 [ 石合純夫 ].医歯薬出版,2003 
3)Nacheve P et al. :Disorders of visual attention and the posterior parietal cortex.Cortex42;2006:766-773.

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