2016/03/04

行動性無視検査 Behavioural inattention test(BIT)






BIT 行動検査の写真
>引用 http://shinkoh-igaku.jp/inspection/bit.html



■目次


 ▶行動性無視検査 Behavioural inattention test(BIT)とは?
 ▶BITの特徴
 ▶所要時間
 ▶実施条件
 ▶検査方法
 ▶結果の解釈方法
 ▶参考資料



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行動性無視検査 Behavioural inattention test(BIT)とは?


 Behavioural inattention test(以下BIT)は、英国のリバーミード・リハビリテーションセンターを中心として開発された半側空間無視の国際的検査法であり、欧米で比較的広く使用されています。
 半側空間無視がわからないという方は、以前に半側空間無視の臨床症状と観察による評価という記事を作成していますので、そちらをご参照ください。
(関連記事)
半側空間無視の臨床症状と観察による評価

 本邦における半側空間無視の検査方法は、従来から抹消試験、線分二等分試験、模写試験、描画試験など、様々な方法が使用されていましたが、これらは施設ごとに評価方法や刺激が異なることや、採点基準が一定しないこと、正常値が明確ではないなど問題がありました。そこで、この問題を解決するため、日本人向けに最小限の修正を加え標準化されたBITの日本版(BIT行動性無視検査日本版)が1999年に出版されました。これらの経緯や後述する検査の特徴より、BIT行動性無視検査日本語版は既に半側空間無視の標準的な評価方法となっており、臨床では頻繁に使用されています。
 今回は、作成者である石合純夫先生の著書である高次脳機能障害学第2版 [ 石合純夫 ]で述べられている内容をベースにご紹介させていただきます。

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BITの特徴


 通常検査と行動検査があります。
 通常検査は、古典的検査方が一通り網羅されています。行動検査は、日常生活場面を模した課題からなり、半側空間無視に伴って生じやすい日常的問題を予測したり、訓練担当者がリハの課題を選択する手がかりとして用いられます。
 通常・行動検査とも、本邦の健常人と脳血管障害患者に基づく標準化が行われており、両検査の各下位項目のカットオフ値まで検討すれば半側空間無視の見落としは非常に少ないといわれています(カットオフ値以下となる場合には、日常生活上でなにかしらの半側空間無視症状が出現を認めます)。
 また、原版との対応も十分に考慮されているため、国際的な比較にも使用できます。

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所要時間


◎通常検査 約20分
◎行動検査を含むBIT全体 45分程度

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>■実施条件


◎指示を理解できる:失語がある場合は非言語性指示でもよい
◎視野障害の有無は問わず十分な矯正視力がある
◎せん妄状態のような明らかな全般的注意障害がない
◎健忘があっても実施可能:目安としてHDS-RまたはMMSEが15点以上

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検査方法


<通常検査>
◎線分抹消試験
 さまざまな方向を向いた短い線分36本のすべてに印を付ける課題です。検者が線分の印刷された範囲を示し、中央に縦に並ぶ4本の線を使用して検査者が印のつけ方を示した後、患者にすべての線に印を付けるよう指示します。検査者が印をつけた線は採点対象外になり、以下の抹消試験もこれは同様です。

◎文字抹消試験
 5行からなる無意味な平仮名文字列から「え」と「つ」のみを選んで印を付ける課題です。まず、文字列の範囲を示し、続いて、検査者が文字列の下に印刷された「え」と「つ」に丸を付けながら、全ての「え」と「つ」に印を付けるように指示します。

◎星印抹消試験
 大小の星印と仮名文字・単語が散在するなかから、小さい星のみに印を付ける課題です。刺激全体の範囲を示し、中央の矢印の上にある星を見させて大小2種類の大きさの星があることを説明し、検査者はその小さい星の方に丸を付けながら、小さい星すべてに印を付けるように患者へ指示します。

 これらの抹消試験では、軽度または(リハ治療を受けてきたような)慢性期の半側空間無視症例では各抹消試験のカットオフ値をクリアしまうことがあります。しかし、健常人45名を対象として時間の目安が報告されており、所要時間が長い場合には時間をかけて代償的探索が行われていると考えることもできるため、以下の所要時間の目安が参考になります。


各抹消試験所要時間(秒)と所要時間上限の目安
健常人45名の各抹消試験所要時間(秒)と所要時間上限の目安
※単位:秒


◎模写試験
 絵がかかれた4枚の検査用紙(星、立方体、花、3つの幾何学図形)を用い、これを同じように描き写してもらう課題です。健常者であれば正確に模写できる手本を用いているので、すべて正しく描けることが期待されます。左右のバランスを見て、正しく描けた場合を1点、正しくない場合を0点としてそれぞれ採点します(最高点4点)。
 重症度は複数の模写結果をみないとわからないですが、左右バランスに着目して重み付けをした採点方法もあり、描画試験によっても無視重症度が表現できます。


BITの模写の左右に重み付けした採点方法
BITの模写の左右に重み付けした採点方法

 なお、立方体の模写は、半側空間無視と言語性IQ低下の両方の影響を受けて低下しますが、無視の重症度は左側の正しい頂点数と負の相関を示します。

◎線分二等分試験
 203mm(8インチ)の3本の線分が右上と中央と左下に印刷された用紙を用い、それぞれの線の真中に印を付けるよう指示します。手や筆記用具を用いて測ろうとする場合があるため、その際は目分量で測るよう指示を加える。採点は、患者が二等分した線と実際の線の二等分点の中心のからの偏位量を測定し、偏倚量が12.7mm(0.5インチ)以内を3点、19.1㎜(0.75インチ)以内を2点、25.4 mm(1インチ)以内を1点として行います。この方法で3本の線分の得点の合計を算出するので、最高得点は9点です。

◎描画試験
 時計、人、蝶の絵を、手本を見ずに描かせる課題です。以下のように指示を与えます。

 時計→「大きな時計の文字盤を描いてください。数字と針も書き入れてください。」
 人→「正面から見た、立っている人の絵を描いてください。」
 ※必要があれば「顔も描いてください。」と指示する。
 蝶→「羽を広げた蝶の絵を描いてください。」

 正しく描けた場合に各1点を与え、合計点は3点になります。時計では、左右に時刻が正しく配分されているかに注目して判断する。人と蝶では、左右のバランスがよければ上手い下手は問いません。模写試験と同様、左右バランスに着目して重み付けをした採点方法もあります。


BITの描画の左右に重み付けした採点方法
BITの描画の左右に重み付けした採点方法

 時計については、USNだけでなく、言語性知能低下の影響も受けやすく、右回りに時刻を詰めて記入して左側に空白を残すパターンは、言語性知能低下の所見ととったほうがよいです。

<行動検査>
 以下の各課題における見落とし数や誤反応数から換算表によって評価点を求めます。刺激が単純な通常検査と異なり、行動検査は意味的要素を含むものが多いため、再検査に練習効果が現れにくいようVersion AとBが用意されています。

◎写真課題
 3枚の写真を提示し、各写真の物を指さしながら名前をいってもらう。名前がいえない場合でも物を指で差せればよい。
◎電話課題
 実際の電話機で提示した番号を押してもらう。
◎時計課題
 デジタル時計とアナログ時計の読みとアナログ時計の時刻合わせを行う。
◎メニュー課題、音読課題
 読みと探索的要因を検査する。単語や文章の読み落としを採点する。採点対象ではないが、文字の偏の見落としなどによる読み誤りも観察しておくととよい。
◎書写課題
 書字を行い、書き落としを採点する。採点対象ではないが、漢字書字の誤りも観察しておくとよい。
◎硬貨課題、トランプ課題
 それぞれ複数ある標的をもらさずに指し示してもらう。通常検査の抹消試験で見落としがない例でも、これらで見落としが明らかになることがある。
◎地図課題
 与えられた平仮名の順番にしたがって地図の道をたどってもらう。

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結果の解釈方法


通常検査と行動検査の各合計得点ならびに下位検査のそれぞれについてカットオフ値が設定されており、これを参考に判断を行います。

通常検査のカットオフ値と最高点
線分末梢試験  34/36
文字末梢試験  34/40
星印末梢試験  51/54
模写試験     3/4
線分二等分試験  7/9
描画試験     2/3
合計点    131/146
※カットオフ値/最高点 

行動検査のカットオフ値と最高点 
写真課題     6/9
電話課題     7/9
メニュー課題   8/9
音読課題     8/9
時計課題     7/9
硬貨課題     8/9
書写課題     8/9
地図課題     8/9
トランプ課題   8/9
合計点     81/68
※カットオフ値/最高点 

◎言語性IQが70以上などで課題に取り組む集中力に問題がない場合、通常検査の合計点が131点以下の場合には半側空間無視(異常)があると判断できます。この場合、ADLや訓練場面においても無視による障害が現れる状態です。

◎通常検査の合計点が132点以上でも、下位検査の1つ以上がカットオフ値以下である場合、半側空間無視の疑いがあります。当該検査における見落としや誤りの分布に左右差があるかに注目し、一側に見落としが多い場合は半側空間無視があると判断します。また、ADL場面も注意深く観察する必要があります。

◎BITでは半側空間無視の重症度を合計得点で表現できるが、通常検査では抹消試験の比重が大きくなりすぎる(3種類の抹消試験の得点だけでも通常検査の89%を占めている)のでカットオフ値以下の下位検査数で重症度を表現する方法も用いられています。

カットオフ値以下の検査数
1~2  軽度
3~4  中等度
5~6  重度


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参考資料


1)高次脳機能障害学第2版 [ 石合純夫 ].医歯薬出版,2003  
 Summury>病巣や病態を含めた症候、評価評価が非常にわかりやすく説明されている。具体的なアプローチ方法に関しては記載が少ないものの、高次脳機能障害の入門としてはお薦めの一冊。
2)石合純夫:行動性無視検査(Behavioural inattention test:BIT).JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION.2009;18(7):628-632.
3)石合純夫:半側空間無視を解明する!− BIT からdeep tests へ-.高次脳機能研究.2004;24(3): 232-237
4)平林一,稲木康一朗,他:Behavioural Inattention Test-Conventional sub-testsの紹介とその問題点.総合リハビリテーション.1999;24(9):873-878.
5)御園生香,石合純夫・他:BIT日本版通常検査における右半球損傷患者の誤反応分布一Laterality indexによる検討一.神経心理学.2001;17:121-129.

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