2016/03/21

脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測






脳卒中リハリハビリテーションの分野における早期予後予測は、何年もの間、盛んに討論されています。
しかし、急性期の予測としては、未だに二木先生の「脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測」に代わるようなものが出てきていない現状かと思われます。

そこで今回は、脳卒中患者の早期自立度予測として、1980年代に発表された二木立先生の「脳卒中リハビリテーションの早期自立度予測」の論文を紹介します。

考える人 脳卒中の予後予測を考える



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■目次


 ▶二木立先生の予後予測法が使用される理由
 ▶予後予測法を使用する前に原著を読む重要性
 ▶脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測の使用方法
 ▶重要な注意点
 ▶最後に一言
 ▶参考資料



二木立先生の予後予測法が使用される理由


二木立先生の予後予測方法は、年齢、自立度・基礎ADL(能力障害)、臨床的諸因子(機能障害)から構成される方法であり、良質な研究計画に基づいて行われています。
また、臨床的な側面が強い評価を採用しており、予測精度の高さと後続研究による良好な精度の報告も存在します。
このため、現在でも臨床で広く使用されている方法であり、脳卒中リハビリテーション分野では知らない人はいないだろうと思えるぐらい有名です。

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予後予測法を使用する前に原著を読む重要性


この予測方法は臨床でよく使われるだけに、ぱっと見で使用しやすいようにフローチャートでまとめられた図が出回っています。
フローチャートは非常に便利で、僕も普段携帯して使わせていただき重宝しています。

ただ・・使用する前には、まずは原著を読んでください。

強調していいます。

「使用する前には必ず原著を読んでください」

なぜ原著を読むことが重要かというと、原著にはこの記事でも後述する重要な注意点や各項目の評価方法の定義が明確に記載されているからです。
フローチャートの出回っているものには、この詳細は書いてないと思います。

仮に、あなたが臨床で担当する患者さんにこの方法を用いて予後を予測する場合、正確に予後を当てるには、まずはその患者さんが報告されている論文の対象にあてはまるような方であるということが重要な条件になります。

つまり、予後予測方法は、使用する対象があてはまっていないと使えません

これを天気予報の例で挙げるなら、鳥取県の天気を知りたいのに天気予報では東京の天気を確認するようなものです。

実際にこんな風に天気予報を見る人がいたら笑ってしまうかもしれませんが、予後予測もこれと同じようにぶっ飛んだようなことをしないように常に気をつけておかなければなりません。

また、仮に患者さんが対象にあてはまるような場合、次は評価項目をどのように評価するかが重要となります。
フローチャートにちっちゃく書いてある文字だけを読んで自分オリジナルの評価を行うのではなく、研究で行われた方法と同様に評価を行わなければまったく意味がありません
 
このようなことは、原著を読めば書いてありますので、あら??私ちょっと怪しいかも・・と思った方は、内容を再度ご確認ください。
この記事では、私自身が必要最低限と思う箇所のみを載せております。

では、長くなりましたが、以下に二木先生の脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測の論文を簡単にまとめたものを掲載します。

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脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測の使用方法


まずは、フローチャートの図で流れを説明します。
脳卒中リハ患者の早期自立度予測の図
※1)ベッド上生活自立:最低限、一人で、ベッド上の起坐や座位保持を行う。車いすへの移乗や操作の可否は問わない。
※2)基礎ADL:以下の三項目
①食事 
 実行:毎回、最後まで一人で食べる。食べ方は問わない。
 介助:経口摂取可能だが介助を要する。または、経口摂取不能で、点滴や経管栄養を行っている。
②尿意の訴え 
 実行:失禁・尿閉がなく、正確に尿意を訴え、処理されるまで待てる。
 介助:失禁、尿閉、正確に尿意を訴えられない、処理されるまで待てない。
③寝返り
 実行:看護師による体位変換を必要としない程度に自分で寝返りをする。完全側臥位になれなくてもかまわない。
 介助:看護師による体位変換を必要とする。それが不要でも、意識障害・認知症のために体動が著しい場合も含む。
※3)両側障害:両側の運動麻痺だけではなく、片麻痺かつ体幹のバランス障害、体幹のバランス障害のみのもの(脳動脈硬化性Parkinsonismなど)も含まれている。


時間経過と伴に、適宜フローチャートに記載の内容を評価します。
各時期で該当しない場合は、次の時期まで評価を待ちます。

また、フローチャートに記載されていませんが以下のような点も参考になりますので押さえておきましょう。

補足
59歳以下では、入院時に全介助でも「基礎的ADL」1項目でも実行なら最終的に屋外歩行自立となる。
59歳以下では、入院2週時に全介助でも「基礎的ADL」2~3項目実行なら最終的に歩行自立となる。
59歳以下では、入院1ヶ月時に全介助でも「基礎的ADL」2~3項目実行なら最終的に歩行自立となる(ただし、これは症例数が少ないために暫定的な結論)。
入院後1ヵ月の時点で、59歳以下かつ全介助の患者、および60歳以上だが“遷延性意識障害・痴呆・両側障害・高度の心疾患”を有さず、しかも基礎的ADLを2項目以上実行している患者では明確な予測は困難である。


これを用いれば、最終到達レベルとおおよその時期の予後予測できます。さらに、短期目標もおのずと設定できてしまいます。
実際に具体例を挙げて考えてみましょう。

例)入院時BRSⅣの場合
  >短期目標(2週時)はベッド上生活自立
  >長期目標(最終到達/2ヶ月以内)は屋外歩行自立
  という風に設定します。

入院時BRSⅣ以上であれば、フローチャートに従って最終到達レベルは屋外歩行自立で、おおよそ2ヶ月以内にこの状態になる可能性があります。短期目標はどのように設定するかというと、ここで注目するのがフローチャートの2週時の箇所です。
2ヶ月以内にこの状態になる方は、2週時にはベッド上生活が自立しているという法則がありませんか。
つまり、入院時にBRSⅣである場合は、2週時にはベッド上生活が自立します(入院時に基礎ADLのうち2項目実行可能な場合もこれと同じ)。
(関連記事)
⇒BRSの評価方法はこちらBrunnstrom Recovery Stage 運動麻痺の評価

もし設定通りに経過しない場合は、長期予後を再度検討する必要があるかと思われます。
予後予測は、最初に行ったらもうしないわけではありません。適宜、評価を行い修正します。
この場合であれば、2週時点で再度ベッド上生活が自立しているかを評価し、自立していればそのままの長期目標、自立していなければフローチャートの2週時点の最終的に歩行不可能になる項目に該当しないかどうかをみます。もしこれにも当てはまっていなければ、長期目標の2ヶ月以内に屋外歩行自立を一度保留にし、一ヶ月時点のベッド上生活自立を中期目標として挙げると良いのではないでしょうか。

それでは、最後に最も重要な脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測の注意点を記載しますのでご参照ください。

重要な注意点


★自分の予測したい患者さんと脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測の論文の対象患者が同類のものであること
 ⇒脳卒中発症後、第30病日目以内に入院発症から入院までの期間:中央値 第2病日目、平均値 第6病日目

※補足:二木立先生は1987年に同様の予測方法を用い、より早期の「発症から7病日以内に入院した患者(発症から入院までの期間:中央値 第1病日目=発症当日入院、平均値 第2病日目)」に対象を絞り、症例数をさらに増やした検討を行っています。その結果は、入院時に7割、2週時に8割、1ヵ月時に9割の高い精度で最終的な歩行自立の可否が予測可能であることが確認されました。


 ⇒対象は片麻痺両側性障害、(脳幹や小脳性の)失調症を呈する症例(上肢単麻痺や精神症状のみ、RINDやTIA、麻痺のないくも膜下出血症例は除外されており対象外。くも膜下出血も数は少ないが含まれている
 ⇒入院後に病状や障害がさらに進行した症例再発作を起こした症例、認知症を有する症例も対象として含まれている

★自立度や基礎ADLの一般原則は以下と同様に評価を行うこと
 ⇒患者のできる(潜在)能力ではなく、日常生活での実行有無を評価する
 ⇒「自立」「実行」とは、患者が監視や介助および指示(促し)なしに、一人で自発的に、安全に、安定して、各動作を行っている場合に限る
 ⇒場所や日内変動で自立度や基礎ADLが異なる際は、より低い方の状態を選択する

★入院後に病状や障害がさらに進行した場合や、再発作を起こした場合は、入院後の最も低い段階での自立度や基礎ADLを用いる(再発例も使用可能

★個々の患者について各時期の予測基準が矛盾している場合は、遅い時期のものを採用する

どうでしょか?重要な注意点、以外に重要だったではないですか??
原著には、あなたの臨床にとってもっと有用な情報ものっているかもしれません。時間がないときはこの記事のないようだけでも足りるかもしれませんが、どうにか時間を作って自分でもちゃんと原著を確認していただけたらと思います。

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最後に一言


今回、二木立先生の脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測のポイントを簡便にまとめましたが、私としては二木先生の資料をまとめるにはやや内容やボリュームにかけてしまった印象です。

この予後予測方法自体も非常に有用なものですが、この方法を提案するまでに至った二木立先生の研究の内容や、原著に記載されているような個々の症例まで検討する臨床力は、本当に尊敬に値するものを感じました。

最近の僕は、臨床研究をしても多変量解析でばかりで統計的な差に固執していましたが、二木立先生の色々な資料を拝見させていただく中で、「臨床に関わるものの研究は大きなデータを解析することじゃなくて、こういう風に患者さんをみてください」というようなメッセージを強く感じました・・(※二木立先生と僕は全く関係はありません。笑)

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参考資料


今回の記事の参考資料はの1と2のみでしたが、記事を書いて行く中で、上記の「最後に一言」のようなことを感じたので、3)以降の資料は僕がその他の多くの方に読んで頂きたいと思うものも含めさせていただいています。勉強になる資料ですので、興味があれば是非読んでみてください。図書の方は、どこのネットショップを見ても売り切ればかりでしたので、手に入ればかなりラッキーだと思います。

1)二木立:脳卒中リハビリテーション患者の早期自立度予測.リハビリテーション医学.1982;19(4):201-223.
2)二木立:脳卒中の予後予測―歩行自立度を中心に.理・作・療法.1987;21(11):710-715.
3)脳卒中の早期リハビリテ-ション第2版 [ 二木立 ].医学書院.1992
 >Summary:二木先生のリハビリテーションの総括と言っても過言ではない資料。脳卒中リハビリテーションに携わる方は、一度は目を通していただきたい資料。4)二木立:脳卒中患者の障害の構造の研究―(第1報)片麻痺と起居移動動作能力の回復過程の研究.総合リハビリテーション.1983;11(6):465-476.
5)二木立:脳卒中患者の障害の構造の研究―(第2報)機能障害の構造および機能障害・年齢と能力障害との関係の研究.総合リハビリテーション.1983;11(7)557-569.
6)二木立:脳卒中患者の障害の構造の研究―(第3報)日常生活動作の構造の研究.総合リハビリテーション.1983;11(8):645-652.

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