2016/05/14

くも膜下出血の交感神経過剰緊張状態の評価にStress indexが有用





脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(以下、くも膜下出血)の重症例における急性期治療にあたっては、破裂動脈瘤そのもののや脳出血、脳室内出血、脳虚血、急性水頭症、脳腫脹といった頭蓋内病変の問題と同時に、重篤な呼吸循環器系の障害を主体とした全身的な合併症への適切な対応による症状悪化を防ぐことが重要となります。

私たちが行う離床やリハプログラムも十分に配慮しなければなりません。

今回は、これを評価する一助となるStress indexを紹介します。



スポンサードリンク





■目次


 ▶くも膜下出血の病態とStress Indexの関係
 ▶Stress Indexの使用方法
 ▶参考資料



くも膜下出血の病態とStress Indexの関係


脳組織が損傷したり頭蓋内圧が過剰に亢進すると、その直後は交感神経活動が亢進し、血液中には副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリン(カテコラミン)が放出されます。
くも膜下出血の重症例では、primary brain damege(動脈瘤破裂自体による脳の一次損傷)と頭蓋内圧の急激な上昇に伴い、発症直後からsympathetic stormとよばれる交感神経の過剰緊張状態が生じ、交感神経活性により血液中のカテコラミンは過剰に上昇します。

実際、くも膜下出血を発症した症例の来院時のカテコラミン濃度を測定した場合、カテコラミン値は発症直後より高値となり、12時間~24時間以内に正常化していきます。
くも膜下出血の重症度別にみた場合には、grade(重症度)が悪いほどカテコラミン値は高値となり、特にgradeⅣやⅤの重症例では高値が持続する傾向があり、神経原性肺水腫、重症不整脈、心筋虚血などの生命に危険を及ぼすような呼吸循環危険の合併症を引き起こす可能性が高いです。

これを私たちの臨床応用に置き換えるならば、発症直後12時間以内の交感神経の過剰緊張状態時にはイベント(前述の肺うっ血や心筋虚血だけではなく、尿細管機能障害などの臓器の機能不全、局所の血管攣縮、一過性の過度の血圧上昇など)を認める可能性が高いことから、この期間は極力全身管理を優先させた呼吸理学療法やROMex、(ドレーン管理下での頭部挙上を含む)体位変換などでの治療を行う必要があるといえます。
特に、重症例ではカテコラミン濃度の減衰が遅延する可能性があるため、発症後12時間以降も十分な配慮を行う必要があります。

症例毎にカテコラミン濃度やその減衰のモニタリングができれば、実際にその場でこれらに気をつけなければならない時期であるかどうかの判断ができますし、カテコラミンがpeak outしたところを狙えばより安全に積極的な離床を図ることができると考えることができます。

しかし、血中のカテコラミン濃度の測定は短時間に行うことが難しく、私たちが介入する際に測定されていることは一般的に少ない現状にあるかと思います。

そこで有用になるのがStress indexです。

目次にもどる



Stress Indexの使用方法


Stress indexは、血液検査で得られる血清K+と血糖値で求めることができます。

「Stress index = K+ ÷ 血糖値」

くも膜下出血の急性期には、しばしばK+が低下し、血糖値が上昇することがよく知られており、これらの値の急激な変動がB受容体を介して交感神経系の活性につながることが報告されています。

実際、Stress indexとカテコラミン値を発症後数時間の超急性期で経時的に測定すると、両者は同様の(並行するような)変化を示し、発症後3時間時の値でみると、ノルアドレナリンとStress indexは有意な相関(r=0.664 p<0.01)を示します。また、重篤な呼吸循環器系の合併症(神経原性肺水腫や心室性不整脈、心筋虚血など)は、非合併症例と比較して合併症例で有意にStress indexが高値になったと報告されています。

ここで述べた相関とは、関係が深いかどうかということを示しています。
カテコラミンとStress Indexの相関が高いということは、両者の関係が強い、つまり、Stress Indexの変化と同じようにカテコラミンも変化しているということであるため、Stress Indexをみればカテコラミンの評価が概ねできるんですね。

Stress Indexの正常値は報告しているものが見当たりませんでしたが、血糖値とK+値の正常値を参考に、血糖値の上限を109、K+の下限を3.4とすると、Stress Indexは32以下程度が正常の参考値となるでしょうか。

Stress Indexが32以上であると、交感神経活性が生じている可能性があると考えることができます。
(※勿論、その他に血糖値やK+が変動する病態もあるので注意)

前述にカテコラミンは12~24時間に正常化に向かうと記載しましたが、実際にStress Indexを当院のデータでみた経過としても多くの症例で24時間以内の血液データ測定時には正常化しています。

WFNS重症度とStress indexの経時的変化

WFNS重症例では、やはり24時間経過してもStress indexが32以下に低下していないものがあります。

くも膜下出血の術後管理では、脳室ドレーンや脊髄脳室ドレーンなどによって頭蓋内圧が管理されていることが一般的かと思いますが、3~4日(~10日程度)は脳浮腫がpeakとなる時期で調整も難しいかと思われます。

頭蓋内圧がpeakの時期には再度Stress Indexが変化する可能性が高いため、このように持続したり再度上昇する症例もあったりすのかな?なんて個人的には思います。

異論はあるかと思いますが、あくまで安全に離床を行うための参考程度になればと思います。
交感神経活性状態であるかどうかは、看護師さんが記載してくださっている熱型表やモニターを眺める、実際に患者さんを見る、触れてみる、ヘッドアップしながらこれらをまめに確認するなど、色々な所見から判断しましょう。


なお、今回紹介したStress Indexは、まだ確立されていないくも膜出血の予後予測にも使用できます。

これに関しては、今年の理学療法学会で発表予定なので、まだ伏せておきますが、高い精度で予測可能なモデルができたので、また後日紹介しようと思っています。

目次にもどる




参考資料


1)佐藤章:重症くも膜下出血急性期の病態と治療.The Japanese Congress of Neurological Surgeons.1998;7:24-31.
2)佐藤章,中村弘,他:重症くも膜下出血急性期治療における頭蓋内及び全身的複合病態の意義.脳卒中の外科.2004;32:97-102.

目次にもどる
関連記事

スポンサードリンク

コメント

非公開コメント