2015/10/25

心原性脳梗塞患者の安全な早期離床は可能か








■目次


 ▶心原性脳梗塞とは?その発生機序
 ▶心原性脳梗塞発症後のリハの現状
 ▶論文からみる心原性脳梗塞の早期離床可否



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心原性脳梗塞とは?その発生機序


脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、その詰まった血管の支配領域の脳細胞が機能しなくなる病気です。

脳梗塞には、様々な臨床上の病型(タイプ)がありますが、心原性脳梗塞とは、心臓にできた血栓が血管内に遊離し、その血栓が血流に乗って脳の血管を塞栓することにより脳梗塞を起こすタイプのことを言います。

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心原性脳梗塞発症後のリハの現状


心原性脳梗塞の発症後のリハビリテーション(以下リハ)は、心臓に残存血栓がないかどうかが早期離床を行う上で重要とされています。

なぜなら、上述の心原性脳梗塞の発生機序でも述べた通り、心臓に残存血栓があった場合は、離床(運動)を行うことで循環動態の変化を誘発し、血栓が遊離することで新たな脳梗塞を招く可能性があるからです。

それゆえに、心原性脳梗塞の患者さんのリハ時に離床を行う際には、まずは心内血栓の有無を経食道心エコーで確認します。
そして、血栓が存在しないことが確認された後に離床が開始されます。

つまり、心原性脳梗塞の患者さんのリハは、心内血栓の有無が確認されるまでの期間は離床が行わないのが一般的になっているものと思われます。
(血栓が存在する場合も血液凝固能が安定するまではヘッドアップ程度までの離床しか行われないのが一般的と思われます)

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論文からみる心原性脳梗塞の早期離床可否


心原性脳梗塞のリハは、一般的に心内血栓の有無が離床を左右していると前述しました。

しかしながら、実際に早期離床を行うと心臓に残存している血栓の遊離による再発が起こりやすいのでしょうか?

今回は、これを検証した論文があるので、結果をみてどのように臨床に活かすかを考えてみましょう。



山田浩二,河波恭弘,他:心内血栓が残存した急性期心原性脳塞栓症患者の早期離床.総合リハビリテーション.2003;31(3):275-280.

対象は、発症7日以内の脳梗塞患者連続540例のうち、心原性脳梗塞と診断された186例でした。
このうち、理学療法が処方されなかった53例、経食道心エコー検査が実施されなかった28例を除外した104例を分析対象としました。

分析方法は、これらの対象者の入院からの経過(神経学的脱落症候の変化、再発率、退院時身体状況の変化)を診療録から後方視的に調査し、心内血栓あり群となし群でその差を比較しました。
両群とも同様に早期から離床が行われていました。

結果は、両群で性別、年齢、責任血管、発症前身体状況、発症から入院までの期間、入院時NIHSSに有意差は認めませんでした。
また、神経学的脱落症候の変化(入院時NIHSS−入院後10日目NIHSS)で両群の悪化率に有意差を認めず、再発や退院時身体状況に関しても有意差は認めませんでした。


この論文の結果より、心原性脳梗塞の早期離床は心内血栓を有する場合でも安全に実施できる可能性があると考えられます。


ただし、この研究では、血栓あり群は1例を除いて全て左心耳の血栓であったとのことです。
血栓の遊離は、以下のように血栓の検出部位や性状でも異なることが報告されています。
◎心内血栓の検出部位と脳塞栓症との関係では、発症率は左房内血栓約70%、左心耳入口部約30%、中部以下約10%となり、左房内血栓を有するものが発症しやすい(Abe2000)
◎血栓の形状が可動性があるものが高率に再塞栓を認めた(Leung1997,Abe2000)

つまり、上述の論文のように左心耳の症例ばかりが対象に含まれている研究では、左房内血栓で可動性がある場合は血栓遊離による再発の可能性の高さは否定しきれません。


したがって、結局のところは、リハ時に離床を行う際には経食道心エコーを行って血栓の箇所と性状の評価が必要になりますね。

そして、経食道エコーの結果が出た際には、左心耳に血栓があった場合は、あったとしても遊離性の血栓でなければ血栓がない場合と同様に安全な離床はできると判断して離床を進める。左房内に可動性の血栓がある場合には、離床を行う際の血栓の遊離がある可能性が高いので、十分に注意を払っておく必要があるということになります。

ここで注意が必要と述べましたが、注意する点は以下になります。
血液凝固能のコントロール:リハを行う前に血液検査でPT-INRを確認し至適値にあるかどうか確認しておきましょう。
離床時のVital管理:血栓の遊離は血流速度の変化により生じる可能性が高いため、離床時には血圧や心拍数などの循環動態に顕著な変化がないかを随時チェックします。また、Afなどのように心臓からの駆出が適切にできていない状態から急に洞調律に戻って駆出がされるようになった際などにも血栓の遊離が発生しやすいため、血圧を上昇させたり過度なストレスを加えたりしてAfを誘発しないように注意しましょう。

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