2016/09/06

脳損傷後の運動麻痺の回復メカニズム ステージ理論








■目次


 ▶なぜ運動麻痺の回復メカニズムを知っておく必要があるか
 ▶運動麻痺の回復メカニズムを示唆する論文
 ▶1st stage recovery
 ▶2nd stage recovery
 ▶3rd stage recovery
 ▶まとめ
 ▶参考資料



なぜ運動麻痺の回復メカニズムを知っておく必要があるか


脳損傷後の運動麻痺の回復メカニズムを理解することは、これを治療する私たちにとって非常に重要な武器になります。

なぜなら、脳損傷後の残存した神経系がどのような過程を得て再び構築されるかを知ることにより、神経系の再組織化を効果的に促すことができる治療を選択できるからです。

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メカニズムを示唆する論文


運動麻痺の回復メカニズムは以下の論文が既に有名になっていますのでご紹介します。

運動麻痺回復のステージ理論 論文

この論文は、脳卒中発症から数日の時点から6ヶ月間、患者に経頭蓋磁気刺激を用いて皮質脊髄路の完全性 と 皮質内興奮性 を計測し、以下の評価項目の変化を経時的に調べて運動麻痺の回復メカニズムを検討したものです。

運動麻痺回復のステージ理論 測定項目

結果は、「脳卒中後、最初の3週間は日々のパフォーマンスの変化は生理学的計測値とは無関係であり、同期間の皮質脊髄路の完全性の平均値は手の機能とよく相関した。しかし、この相関は3ヶ月を超えると弱くなった。対照的に、皮質内興奮性の測定値のほとんどは急性期には相関しなかったが、3ヶ月を超えると強く相関した。したがって、急性期では患者のパフォーマンスは皮質脊髄路出力の損傷によって制約を受け、3ヶ月からのパフォーマンスの向上は残存した皮質脊髄路を最大限に効率化し、いかに残存した皮質間のネットワークを再編成するかに依存するのかもしれないと考えられた。皮質内の脱抑制はこれらのネットワークへのアクセスを促進し回復を助長すると思われた。」とのことでした。

この論文の結果のみでは少し分かりにくいかと思いますが、運動麻痺の回復メカニズムは1st stage recovery、2nd stage recovery、3rd stage recoveryの大きく3つの段階に分けられるということです。

誰もがご存知の相澤病院の原先生は、この3つのステージを以下のように分かり易くまとめられており、非常に分かり易いので参考にしていただければと思います。

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1st stage recovery


いわゆる急性期では、残存している皮質脊髄路を刺激しその興奮性を高めることで麻痺の回復を促進できる時期であり、その興奮性は急速に減衰して3 カ月までには消失する。つまり、急性期において運動麻痺を回復させることができるリハビリテーションは、いかに効果的に残存している皮質脊髄路の興奮性を高めることができるかが重要な時期であるといえます。

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2nd stage recovery


いわゆる回復期では、皮質脊髄路の興奮性に依拠するのではなく、皮質問の新しいネットワークの興奮性に依拠する時期となります。このメカニズムの再構築は3 カ月がピークとなり、回復メカニズムは皮質間の抑制が解除されることで機能します。代替出力としての皮質ネットワークの再組織化が構築され、残存している皮質脊髄路の機能効率を最大限に引き出す中枢指令として機能し、大脳での組織的再構築がなされます。
そして、この脱抑制によるメカニズムも6ヶ月までには消失するため、神経回路間の再組織化を促すリハビリテーションプログラムをこの時期までに行い、成果を引き出すことが重要な時期になります。

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3rd stage recovery


2nd stage recovery後の6 カ月以後も持続して徐々に強化される機能は、リハビリテーションにより惹起されるシナプス伝達の効率化によりなされます。つまり、この時期は、2nd stageまでに再構築された新しい代替のネットワークを頻回に使用することでこの回路のシナプス伝達効率が良くなり、運動出力のネットワークが一層強化されて確立される時期です。

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まとめ


以上の3つのステージの運動麻痺の回復メカニズムをまとめると、以下のようなシェーマになります。
運動麻痺回復のステージ理論

最も重要なことは、1st stageで良好な帰結を経ずして次のstageへと移行することはありえないため、早期からのリハビリテーションの開始と連続性、そしてstage 理論を意識した皮質脊髄路の興奮性を促進するような質の高いリハビリテーションプログラムの施行とその成否が求められます。

私は普段、急性期で1st stageに関わらせていただいており、具体的な臨床的での皮質脊髄路の興奮性の強化としては、以前に痙縮の抑制方法で紹介した振動刺激や促通反復療法(マッサージ機で脳卒中後の麻痺の治療できる!?痙縮を抑制する振動刺激療法! )、電気刺激療法を用いてより効果的な治療を行っております。

特に効果がものとして、私は電気刺激療法をよく使っていますので、これらに関してもまた後日紹介したいと思います。

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参考資料


1)Swayne OB, et al .: Ward and Richard J. Greenwood. Stages of Motor Output Reorganization after Hemispheric Stroke Suggested by Longitudinal Studies of Cortical Physiology. Cerebral Cortex 2008;18:1909-1922.
2)原寛美:脳卒中運動麻痺回復可塑性理論とステージ理論に依拠したリハビリテーション.脳外誌.2012;21(7):516-526.

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