2015/10/27

急性期にベッド上から立位までの基本的動作能力を客観的に評価する方法






私たち理学療法士は、基本的動作能力の改善を図るプロフェッションです。

すなわち、私たちにとって基本的動作能力がどんな状態にあるのか、また介入の結果どのように変化したのかを評価することはいうまでもなく重要といえます。

今回は、この基本的動作を急性期でも客観的に評価できる評価法をご紹介します。



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■目次


 ▶基本的動作を客観的に評価できることの重要性
 ▶基本的動作能力の評価尺度の改定版(ABMSⅡ)の評価方法
 ▶ABMSⅡを予後予測に利用する
 ▶ ABMSⅡの問題点
 ▶参考資料



基本的動作を客観的に評価できることの重要性


治療介入を行った際、患者さんの基本的動作が改善しているようでも、これが自分にしかわからない変化であれば治療効果があると説明することはできません。

また、治療前後の動作の仕方を細部まで記録し、この変化を具体的に他者へ伝達することができたとしても、この場合は情報量が多いために他の患者さんと自分が治療を行った患者さんの比較は困難となることが多いかと思います。

この問題を解決するには、「各動作でどういうことができれば、どのように判定する」というような基準が必要であり、この基準に従って「点数化する」ということが重要になります。

一定の判断基準に従って点数化し、これを合計すれば、違う患者さん同士でも同じように点数で比較ができますね。

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基本的動作能力の評価尺度の改定版(ABMSⅡ)の評価方法


脳卒中患者における基本的動作能力の評価法はいくつかありますが、今回は、脳卒中を発症した当初の時期でもベッド上から立位までが評価できるRevised version of the Ability for Basic Movement Scale(以下ABMSⅡ)を紹介します。

Revised version of the Ability for Basic Movement Scale:ABMSⅡ1)
基本的動作能力の評価尺度の改定版(ABMSⅡ)

ABMS2.png
※1:取扱説明
「仰臥位からの寝返り」:患者は、最も自らが好む側に仰臥位から寝返るよう指示される。
「起き上がり」:患者、背臥位からベッドの端に座った姿勢になるよう指示される。
「座位保持」:患者は30秒以上、ベッドの端に座った姿勢を保持するよう指示される。
「起立」:患者は、ベッドの端に座った姿勢から床に足をついたままベッドサイドで立った姿勢になるよう指示される。
「立位保持」:患者は、ベッドサイドで床に足をついたまま30秒以上立った状態を維持するよう指示される。
※2:能力のグレード
1=移動が禁止:患者は、不安定なバイタルサインや合併症のような医学的な問題のために動作が禁じられる
2=完全に依存:動作の75%以上を他人がサポートする
3=部分的に依存:動作の75%以下を他人がサポートする
4=監視:動作を行うために、物理的に接触することなく、口頭での手がかりやジェスチャーを提供することが必要
5=特殊環境下での自立:手摺やベッドの端を掴んで動く
6=完全自立:ベッドの手すりや端を保持することなく動く

ABMSⅡの評価方法は上記の通りですが、注目すべきは、「1=禁止」も評価していることと、この評価スケールが予後予測にも使用可能ということです。

脳卒中急性期、特に発症から3日以内ごろの時期では、安静度制限などの医学的問題のために動作が制限されていることが多いです。
そして、このように動作が患者さんの能力の問題以外で制限されている場合は、どのようにその動作を評価するかが設定されていないような評価は使用ができませんが、これなら「1=禁止」と設定されているため、使用が可能です。
合計点数が5点であれば「完全ベッド上安静」ということも推測ができます。

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ABMSⅡを予後予測に利用する


AMBSⅡで基本的動作能力を点数化して客観的に評価できることは理解できたかと思います。
このように、色々な患者さんを同じ評価項目で、同じ尺度で評価できると、データ毎にどちらが能力が高いかを比較できたり、データをまとめてその傾向をみたりすることもできます。
さらに応用的な利用方法としては、このまとめたデータを使って予後予測も行うことができます。

上記に紹介したABMSⅡの評価を作成した論文では、脳卒中患者71人を対象(前向き研究)にステップワイズ重回帰分析という解析を用いて、ABMSⅡで以下のような予後予測ができるという結果を報告しています。
ABMS2と4週時BIの重回帰

つまり、4週時点のBI(日常生活活動:日常生活上能力)は、「2週時BS(麻痺の程度)」、「2週時BI」、「リハ開始時ABMSⅡの仰臥位からの寝返りの点数」、「発症から2週間経過時点のABMSⅡの立位保持の点数」の4項目で88.9%が説明できる(=この4つの項目を用いれば、その予測の精度は88.9%であった)ということを示しています。


また、その他にもABMSⅡを用いて、脳卒中発症直後の状態から、退院時に自宅か転院かを予後予測する指標を検討した論文もあります。2)

急性期脳梗塞患者215例を対象に、社会的因了を含めた広範な項目を診療録より後方視的に調査し退院先に関連する因子を検討した結果、多重ロジスティック回帰分析にて「最重症時NIHSS」、「初回車椅子乗車時ABMSⅡ」、「高次脳機能障害有無」,「リハ開始時BI」が退院先の関連因子として採用され、判別的中率(予測精度)は83.7%であった。さらに、ROC 曲線を用いて退院先を判別するためのカットオフ値を求めた結果、「NIHSS は3.5点(感度85.1%、特異度66.9%)」、「初回車椅子乗車時ABMSⅡは21.5点(82.6%、特異度77.7%)」であった。

この報告では、ABMSⅡを評価する時期や在院日数が統制されていない点が非常に曖昧であるため、他施設の臨床で実際に使用するには十分ではないと感じるところはあります。
これは、2週時点に退院する人と4週時点に退院する人では、異なる要因が関与する可能性もあるからです。

しかしながら、初回車椅子乗車の実施は1週間以内になされており、急性期のなかでもより早期に、客観的指標であるABMSⅡを用いて退院先を予測する指標を提示している点から、有用な論文と考えられます。


以上のように、ABMSⅡは急性期における安静度制限の問題を加味した基本的動作能力の評価ツールであり、基本的動作能力を数値化することで比較を行うことや予後予測の指標としても利用されています。



ABMSⅡの問題点


ABMSⅡは、急性期から基本的動作を客観的に評価でき、これは比較や予後予測などにも利用できることから、高い利便性があると思います。

ただ、評価の介助量の規定はパーセンテージで表現されており、非常に曖昧な表現となっています。

介助する感覚は検者間で大きく異なる可能性がありますね。

FIMのようにもう少し具体的な規定や検者間信頼性の報告が欲しいところですが

・・・これに関しては、調べた限りでは良い報告をみつけることはできませんでした。

このような評価法の問題や限界は、どのような評価にも必ず存在します。自分が何をどの程度で評価したいのかを明確にし、その評価法の限界を知った上で臨床で有効に活用しましょう。

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参考資料


1)Taira Tanaka, Keiji Hashimoto, et al. : REVISED VERSION OF THE ABMS AS AN EARLY PREDICTOR OF FUNCTIONING RELATED TO ACTIVITIES OF DAILY LIVING IN PATIENTS AFTER STROKE.J Rehabil Med 2010; 42: 179–181.
2)八木麻衣子,川口朋子,他:急性期病院の脳梗塞患者における退院先に関連する因子の検討―自宅退院群と回復期病院群における検討―.理学療法学.2012;39(1):7-13.

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