2016/11/08

小脳性運動失調の評価 日本語版SARA(Scale for the assessment and rating of ataxia)






運動失調の評価

日本語版Scale for the assessment and rating of ataxia (以下SARA)は、以前にご紹介したInternational Cooperative Ataxia Rating Scale(以下ICARS)よりも小脳性運動失調に特化した評価方法であり、ICARSの1/3の時間(4分)で測定ができることや、評価者間信頼性が高い(検査者間の誤差が少ない)こと、Barthel indexやICARSと有意な相関があることが確認されていることから、臨床上で失調症状を呈する症例に用いることが多い評価方法です。



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■目次


 ▶適応
 ▶方法
 ▶解釈
 ▶注意点
 ▶参考資料



適応


脊髄小脳変性症に対してはICARS(lnternational Cooperative Ataxia Rating Scale)、多系統萎縮症にはUMSARS(Unified Multiple System Atrophy Rating Scale)などの評価が用いられ、これらの評価はその他の失調を呈する疾患にも応用されています。
ICARSについては以前の記事でご紹介しました。
(関連記事)
運動失調の評価 ICARS(International Cooperative Ataxia Rating Scale:運動失調の国際評価尺度)

これらの評価は変性疾患の評価を行うことが念頭にありますが、SARAはこれらとは異なり、小脳性運動失調の評価に特化して項目が絞られています。

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方法



SARAは、歩行、立位、座位、言語障害、指追い試験、指鼻試験、手の回内外運動、踵すね試験の全8項目からなります。評価は以下に掲載したとおりに採点します。

1)歩行
以下の2種類で判断する。①壁から安全な距離をとって壁と平行に歩き、方向転換し、②帰りは介助なしでつぎ足歩行(つま先に踵を継いで歩く)を行う。
0:正常。歩行、方向転換、つぎ足歩行が困難なく10歩より多くできる。(1 回までの足の踏み外しは可)
1:やや困難。つぎ足歩行は10 歩より多くできるが、正常歩行ではない。
2:明らかに異常。つぎ足歩行はできるが10 歩を超えることができない。
3:普通の歩行で無視できないふらつきがある。方向転換がしにくいが、支えは要らない。
4:著しいふらつきがある。時々壁を伝う。
5:激しいふらつきがある。常に、1 本杖か、片方の腕に軽い介助が必要。
6:しっかりとした介助があれば10m より長く歩ける。2 本杖か歩行器か介助者が必要。
7:しっかりとした介助があっても10m には届かない。2 本杖か歩行器か介助が必要。
8:介助があっても歩けない。

2)立位
被検者に靴を脱いでいただき、開眼で、順に①自然な姿勢、②足を揃えて(親趾同士をつける)、③つぎ足(両足を一直線に、踵とつま先に間を空けないようにする)で立っていただく。各肢位で3 回まで再施行可能、最高点を記載する。
0:正常。つぎ足で10 秒より長く立てる。
1:足を揃えて、動揺せずに立てるが、つぎ足で10 秒より長く立てない。
2:足を揃えて、10 秒より長く立てるが動揺する。
3:足を揃えて立つことはできないが、介助なしに、自然な肢位で10 秒より長く立てる。
4:軽い介助(間欠的)があれば、自然な肢位で10 秒より長く立てる。
5:常に片方の腕を支えれば、自然な肢位で10秒より長く立てる。
6:常に片方の腕を支えても、10 秒より長く立つことができない。

3)坐位
開眼し、両上肢を前方に伸ばした姿勢で、足を浮かせてベッドに座る。
0:正常。困難なく10 秒より長く坐っていることが出来る。
1:軽度困難、間欠的に動揺する。
2:常に動揺しているが、介助無しに10 秒より長く坐っていられる。
3:時々介助するだけで10 秒より長く坐っていられる。
4:ずっと支えなければ10 秒より長く坐っていることが出来ない。

4)言語障害
通常の会話で評価する。
0:正常。
1:わずかな言語障害が疑われる。
2:言語障害があるが、容易に理解できる。
3:時々、理解困難な言葉がある。
4:多くの言葉が理解困難である。
5:かろうじて単語が理解できる。
6:単語を理解できない。言葉が出ない。

5)指追い試験
被検者は楽な姿勢で座ってもらい、必要があれば足や体幹を支えてよい。検者は被検者の前に座る。検者は、被検者の指が届く距離の中間の位置に、自分の人差し指を示す。被検者に、自分の人差し指で、検者の人差し指の動きに、できるだけ早く正確についていくように命ずる。検者は被検者の予測できない方向に、2 秒かけて、約30cm、人差し指を動かす。これを5 回繰り返す。被検者の人差し指が、正確に検者の人差し指を示すかを判定する。5 回のうち最後の3 回の平均を評価する。
0:測定障害なし。
1:測定障害がある。5cm 未満。
2:測定障害がある。15cm 未満。
3:測定障害がある。15cm より大きい。
4:5 回行えない。

6)鼻―指試験
被検者は楽な姿勢で座ってもらい、必要があれば足や体幹を支えてよい。検者はその前に座る。検者は、被検者の指が届く距離の90%の位置に、自分の人差し指を示す。被検者に、人差し指で被検者の鼻と検者の指を普通のスピードで繰り返し往復するように命じる。運動時の指先の振戦の振幅の平均を評価する。
0:振戦なし。
1:振戦がある。振幅は2cm 未満。
2:振戦がある。振幅は5cm 未満。
3:振戦がある。振幅は5cm より大きい。
4:5 回行えない。

7)手の回内・回外運動
被検者は楽な姿勢で座ってもらい、必要があれば足や体幹を支えてよい。被検者に、被検者の大腿部の上で、手の回内・回外運動を、できるだけ速く正確に10 回繰り返すよう命ずる。検者は同じ事を7 秒で行ない手本とする。運動に要した正確な時間を測定する。
0:正常。規則正しく行なえる。10 秒未満でできる。
1:わずかに不規則。10 秒未満でできる。
2:明らかに不規則。1 回の回内・回外運動が区別できない、もしくは中断する。しかし10 秒未満でできる。
3:きわめて不規則。10 秒より長くかかるが10 回行える。
4:10 回行えない。

8)踵―すね試験
被検者をベッド上で横にして下肢が見えないようにする。被検者に、片方の足をあげ、踵を反対の膝に移動させ、1秒以内ですねに沿って踵まで滑らせるように命じる。その後、足を元の位置に戻す。片方ずつ3 回連続で行なう。
0:正常。
1:わずかに異常。踵はすねから離れない
2:明らかに異常。すねから離れる(3 回まで)
3:きわめて異常。すねから離れる(4 回以上)
4:行えない。(3 回ともすねにそってかかとをすべらすことができない)

※項目5~8の四肢の検査は、原疾患以外の理由により検査自体ができない場合は5とし、平均値、総得点に反映させない。
※項目5~8の四肢の検査は、左右両側を評価し、その点数の平均(左右合計点÷2)を点数とします。

なお、ICARS同様に臨床でも使用しやすいようにSARAの評価用紙も作成しました。
使用する際は、印刷していただき、評価毎に各チェックボックスに印をしていくと円滑に評価ができると思います。

小脳性運動失調の評価 日本語版SARA(Scale for the assessment and rating of ataxia)

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解釈


・全て評価ができた場合
無症状0点~最重症40点となります。

・四肢の評価ができなかった場合
無症状0点~最重症は24点となります。
※四肢の評価は「原疾患以外の理由により検査自体ができない場合は5とし、平均値、総得点に反映させない。 」というように評価を行うように規定されているためです。

点数による重症度の層別化などができるかどうかは、僕が調べた限りではありませんでした。

しかし、このように神経学的症状を定量的に評価することで、患者さんの全体的な重症度や各症状の重症度がどの程度のものなのかを表現でき、治療効果の比較や症状が出現している箇所への介入の検討などが客観的に行えます。

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注意点


検査項目が8項目に絞られたことから、検査が短時間で行え患者さんの負担が少なくなる点、最初に述べた検者間信頼性の高さやADLとの関係が高いことが証明されているといった点で、非常に有用な評価法と言えるのではないでしょうか。

ただし、平成18年 厚労省運動失調症に関する調査研究班の報告では、症例数が十分とは言えず、経時的変化や治療効果を見たり、研究データとして使用する場合にはICARSに劣る可能性はあります。

また、四肢の評価に制約がある場合、例えば、急性期でVitalが安定していない場合や安静度制限がある場合、またはこの注釈に該当するような症例では、総得点の扱い方がかなり難しいです。
これに関してはICARSも同様で、評価の限界といったものでしょうか。
評価法は、

何をどう評価したいのかを考えて適切に利用しましょう。

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参考資料



1)厚生労働省特定疾患対策事業「運動失調に関する調査および病態機序に関する研究班」:http://neurol.med.tottori-u,ac,jp/scd

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