2016/11/09

体表からわかるランドマークを用いた重心位置と姿勢の評価~力学的負荷の評価法と治療への応用方法~






姿勢やアライメントから基本的動作を見ることは、理学療法では基本中の基本です。

しかし、意外にもネット上にはこの評価方法をわかりやすく説明しているサイトがありませんでした。

書籍には当たり前のように載っているのですが・・毎回色々な本を探すのは大変なので、簡単にまとめてみました。



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■目次


 ▶重心とは
 ▶重心と支持基底面の関係
 ▶重心位置の評価方法
 ▶重心線と身体各部との関係
 ▶重心線と各部位の位置関係の評価方法
 ▶臨床への応用
 ▶参考資料


重心とは


重心とは身体の質量分布の中心のことです。

分かりにくい言葉ですが、以下の図の例のように、身体の色んな部分の重さの中心をとっていくと身体重心の位置が決まります。

体表からわかるランドマークを用いた重心位置と姿勢の評価 力学的負荷の評価法と治療への応用方法 重心とは

右上肢と頭部の重心位置は、右上肢の重心位置と頭部の重心位置の均衡が取れるところになり、同じような感じで全ての部分の中心を結んでいくと、一箇所に集まります。

このように、四肢や頭部などの重さの中心となる点が身体重心の位置ということですね。

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重心と支持基底面の関係


支持基底面とは、その名前の通り、支持している底の面のことです。

両足で立っているときでは、接地している足底面の外縁を囲んだ範囲のことです。

前述した重心は身体の重さの中心となる点であり、重力はこれに対して床方向に一直線にかかります。

よって、重心位置から床方向に一直線の下ろした線(重心線)が支持基底面内にあれば物体は安定しますし、支持基底面から外れていれば回転する力(回転モーメント)が発生し、物体は転倒します。
体表からわかるランドマークを用いた重心位置と姿勢の評価 力学的負荷の評価法と治療への応用方法 重心と支持基底面の関係

ただし、人の場合では、こんなに簡単には転倒しません。

なぜかというと、転倒しないようにこの回転モーメントをなんとか止める(拮抗する)ように筋肉を使って調整するからです。

しかし、筋肉をつかって止めていると、それだけその筋肉に負担がかかります。

たとえば、上半身重心が股関節よりも前方にある場合、上半身は股関節を中心に前方に倒れるような回転モーメントが発生するため、それを防ぐために背部や股関節後面の筋群が常時働かなければいけない状態になるので、背部や股関節後面の筋肉にかかる負担がかなり増えてしまいます。

重心位置を評価することは、このような力学的負担を評価することにもつながります。



補足)機能的支持基底面
先ほど立っている時の支持基底面について説明しましたが、立っている時に接地している足底面のすべてが真に体重を支持できるわけではありません。

たとえば、立っている時の前足部の足底面に画びょうが置いてあったとしましょう。

この場合、普通であれば(痛みをなんとも思わない超人でなければ)、画びょうが当たっている前足部には体重をかけられないと思います。

つまり、このようになんらかの場合で足底面に荷重をかけられない部分の支持基底面は、支持基底面であるけども機能的には使えない支持基底面であるといえ、これを機能的支持基底面といわれています。

機能的支持基底面は、60歳より若い人では、足長の約60%の範囲が機能的支持基底面として使え、60歳よりも高齢では加齢によりその範囲は徐々に減少していくことが報告されています。


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重心位置の評価方法


臨床では、前述したように各体節における重心をそれぞれ評価し、その点を結んでいくなんて方法は使いません。
かなりの時間がかかってしまいますし、正確に行うことは困難です。

臨床的には、「上半身重心」と「下半身重心」の位置を覚えておき、これらを用いておおよその「身体重心」の位置を判断します。

上半身重心の位置:第7~8胸椎部
※第7胸椎棘突起ののおおよその位置は、肩甲骨下角の位置になります。
(関連記事)
ランドマークとしての棘突起~棘突起と対応する骨の触診~

下半身重心の位置:大腿長の1/2~上1/3の間の点

身体重心の位置:上半身重心と下半身重心の中点

ここで注意しなくてはならない点が一つ!

上半身と下半身は、動作中に動くので、動作中は身体重心の位置も変化しています。

通常の静止立位の状態では、重心位置は骨盤の中ほど(第2仙椎のやや前方)に位置していますが、例としてスクワットを挙げると、スクワット動作時には下肢は屈曲して体幹は前傾するため、重心位置は骨盤よりも前に移動し骨盤の外にでます。

動作中は適宜身体重心の位置が変化しているため、上半身重心と下半身重心をしっかり追いながら身体重心の位置をイメージして評価しましょう。

なお、動作中における力学的負荷も評価方法の例としてもスクワット動作がわかりやすいかと思いますので、これも例としてあげておきます。

体幹を前屈したスクワットを行った場合、身体重心の位置は骨盤のかなり前方に位置し、重心線は支持基底面内の前か中心辺りに落ちることになります。

しかし、体幹を前屈せずに上半身重心の位置を変えずにスクワットをした場合は、身体重心はほぼその位置のままか後方よりになりますので、重心線は支持基底面内の中心かやや後方辺りに落ちることになります。

体幹を前屈した場合と前屈しない場合で比較すると、前屈しない場合では、重心線が膝関節軸よりもかなり後方を通る位置になるため、体幹を前屈しない場合よりも膝関節を屈曲させる方向にかかる回転モーメントが強くなります。


このように、動作中も身体重心の位置が把握できれば、その重心位置から垂直におろした重心線と各関節の位置関係から関節や筋肉に加わる力学的負荷の推測が可能になります。

力学的負荷は、回転モーメントが強いほど強くなるため、前述のように各関節が重心線から離れている程度を見れば負荷が把握できますね。

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重心線と身体各部との関係


重心の位置が変化しなくとも、アライメントが変われば重心線と各部位との位置関係は変化します。

先ほど触れましたが、各関節の回転モーメントは関節が重心線から離れるほど強くなりますので、重心線と関節の位置が離れているとその関節や関節を制御する筋肉にかかる負担は大きくなります。

逆に、関節モーメントは関節が重心線に近くなれば弱くなるので、重心線と関節の位置が近くなるほどその関節や関節を制御する筋肉への負担は少なくなります。

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重心線と各部位の位置関係の評価方法


理想的な姿勢は、各関節や筋肉への負担が少なく、安定していて外乱刺激に反応しやすく、エネルギー消費が最小限となる姿勢です。

この姿勢は、一般的に以下の重心線と各部位の位置関係にある場合であるといわれていますので、以下の体表のランドマーク(指標・目印)を覚えて評価を行いましょう。

ランドマークは、皮膚や筋肉ではなく、位置が変化しにくい骨を用いましょう。
皮膚や筋肉は、片側のみが張っていたりすると、引っ張られたり捻れたりして位置が変化してしまいます。

[矢状面] 
 ・外耳道
 ・第7頚椎
 ・肩峰
 ・大転子の後方
 ・膝関節の前方(膝蓋骨の後方)
 ・外果の前方

[前額面:前] 
 ・鼻
 ・胸骨もしくは剣状突起中央
 ・両側の上前腸骨棘もしくは大転子を結ぶ線の中央
 ・両側の膝関節(膝蓋骨)を結ぶ線の中央
 ・両側の足関節(内果もしくは外果)を結ぶ線の中央
※加えて、両側の上前腸骨棘、股関節、膝関節、足関節、第2中足骨が同一直線状にある状態

[前額面:後] 
 ・外後頭隆起
 ・椎骨棘突起
 ・両側の肩峰を結ぶ線の中央
 ・正中仙骨稜(仙骨にある棘突起みたいな突起)
 ・両側の上後腸骨棘もしくは大転子を結ぶ線の中央
 ・両側の膝関節(膝蓋骨)を結ぶ線の中央
 ・両側の踵骨を結ぶ線の中央
※加えて、両側の上後腸骨棘、股関節、膝関節、足関節、踵骨が同一直線状にある状態

[矢状面] 
 ・外耳孔もしくは乳様突起
 ・肩峰
 ・大転子の前方(股関節中心)
 ・膝関節の前方(約1.4cm後方:膝蓋骨のやや後方)
 ・足関節外果の前方(約4.4cm前方)

重心線と各部位の位置関の評価を行う際には、ニュートラルポジションの評価方法も同時に行って全身的にアライメンをみると良いです。
(関連記事)
ニュートラルポジションの評価方法(解説図付き)

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臨床への応用


・重心線の位置を評価することで、各部位のどこに負担がかかっているのかが評価できます。

・股関節を中心に制御を行うように治療しましょう。
上半身重心と下半身重心について前述しましたが、人は重心の位置を大きく分けて上半身と下半身の位置を変化させることによって制御しています。

以下の図のように、上半身と下半身が股関節でつながっているようなモデルを用い、重心を特定の位置に固定した場合の例で考えてみましょう。

重心線の位置は、股関節中心と一致するため、股関節中心の位置に固定してみます。

体表からわかるランドマークを用いた重心位置と姿勢の評価 力学的負荷の評価法と治療への応用方法 上半身と下半身は股関節を軸に調節される

上半身と下半身を調節すれば、股関節中心から重心位置が移動しないことがわかると思います。

このように、上半身と下半身が協調して動かせれば重心位置を整えることが可能ですので、治療を行う際には、まずは重心を股関節中心のところに上半身と下半身を調節できるように練習しましょう。

これができれば、次の段階で上述した理想的な姿勢の重心線に近い姿勢にその他の各部位を修正していきましょう。
※この際には股関節中心上に重心がある状態を保てるようにしながら徐々に修正していきましょう。

なお、重心位置のコントロールと姿勢は、足底面(床面や支持基底面)を変化させることによっても治療ができます。
・支持基底面を狭くする
荷重できる場所を前足部のみにすると重心の前方偏位、後足部のみにすると重心の後方偏位

・傾斜のある台を使用する
昇り方向に向かって立つと前足部に荷重が偏るので重心の前方偏位、降り方向に向かって立つと後足部に荷重が偏るので重心の後方偏位

両者ともに、転倒せずに姿勢が保持できる状態を維持する練習を行うことで、足部よりも上方に位置する各部位も重心に合わせて変化させることができる場合があり、治療に応用できます。

後方への重心偏位を促したいのであれば、後ろ歩きなども効果があります。



補足)第7頚椎と仙骨底後縁の位置関係と力学的負担について
力学的負担が最小限である理想的な姿勢の評価に関しては前述したとおりですが、別の視点からも推察できます。

健常者では、第7頚椎から床へ垂直に降ろした線が仙骨底後縁と一致します。

第7頚椎から下ろした垂直線が仙骨底後縁よりも前方に移動し股関節よりも前の位置になると、それだけ体幹や股関節を屈曲するモーメントが強くなりますので、背部の筋群や股関節伸展筋群にかかる力学的負荷が増大します。

逆に、仙骨底後縁よりも後ろにあるとこれらの筋群は楽な状態が保てます。
これは腰痛治療などにも役立ちます。


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参考資料


1)姿勢と歩行 [ 樋口貴広 ]
2)結果の出せる整形外科理学療法 [ 山口光国 ]
3)基礎運動学第6版 [ 中村隆一(リハビリテーション) ]

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