2016/11/17

くも膜下出血③ 発症機序、病態と経過~合併症を含めて~






これまで、くも膜下出血について以下の情報を順にお話してきました。
(関連記事)
くも膜下出血① 疫学(発症頻度・性差と年齢・動脈瘤部位・予後)

くも膜下出血② 重症度分類( H&H/ H&K/ WFNS/ fisher )

今回は、くも膜下出血の発症機序、病態と経過に関して、留意すべき合併症の話も含めた内容を掲載致します。



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■目次


 ▶脳卒中におけるくも膜下出血の位置づけ
 ▶発症機序
 ▶病態と経過
 ▶合併症の関連図
 ▶参考資料


脳卒中におけるくも膜下出血の位置づけ


脳卒中は脳の血管が詰まる虚血性脳卒中、脳の血管が破れる出血性脳卒中に大別できます。さらに、虚血性脳卒中は一過性脳虚血発作と脳梗塞、出血性脳卒中は脳出血とくも膜下出血に分類されます。
つまり、今回お話するくも膜下出血は、脳の血管が破れて出血を起こす出血性脳卒中に分類されています。

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発症機序


脳出血とくも膜下出血は出血性脳卒中に分けられることは前述した通りですが、両者の違いは、脳出血が脳実質内に出血をきたすもの、くも膜下出血が脳と脳を覆う膜の一つであるくも膜との間(くも膜下腔)に出血をきたすものというところです。

くも膜下出血③ 発症機序、病態と経過~合併症も含めて~ 頭部の層構造

くも膜下出血の原因は、脳血管にできた脳動脈瘤の破裂が8割を占めています。
(その他の原因で次に多いのが脳動脈奇形5~10%、その他10%はもやもや病などです)

脳動脈瘤は、脳動脈の壁の一部が拡張してできます。特に血行力学的ストレスがかかりやすく脆弱な箇所である血管分岐部にできやすく、ウィリスの動脈輪周辺に高発します。
ウィリスの動脈輪周囲の動脈瘤の発生率は以前の記事をご参照ください。
(関連記事)
くも膜下出血① 疫学(発症頻度・性差と年齢・動脈瘤部位・予後)


非常に簡単な説明ですが、くも膜下出血の発生機序は脳血管にできた動脈瘤が破れ、動脈血がくも膜下腔に流れ出ることで発症することは理解できましたでしょうか。

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病態と経過


次は本題である病態と経過に関してです。

病態は発症から以下のような流れで変化していきます。

【一次損傷(急性期)】
①脳動脈瘤が破裂すると同時に、動脈血は急激にくも膜下腔に流入します。このとき、破裂の勢いが強いと脳内や脳室内にまで出血が広がることもあり、脳損傷をより重篤化させます。

②くも膜下腔に流入した血液は脳全体を急激に圧迫するため、ごく短時間で頭蓋内圧が顕著に亢進します。また、動脈瘤の破裂によって、脳主要血管内の動脈血はくも膜下腔に漏れてしまうため脳血流の低下も引き起こされます。

③このような頭蓋内圧の亢進や脳血流の低下により、脳灌流圧は大幅に低下します。つまり、脳組織への血流が十分に送り込めなくなるため脳は虚血状態になります。

④脳虚血により、意識レベル低下や意識消失が消失が起こります。多くは一過性ですが重症例では意識障害が持続します。

⑤出血が重篤な場合は、脳幹部にも圧が加わり呼吸障害や不整脈などが生じることもあります。

上記のような一次脳損傷に続いて、脳浮腫、急性水頭症、脳ヘルニア、けいれん発作、交感神経の興奮による心筋障害や神経原性肺水腫などが引き起こされます。合併症に関しては後述に関連図を用意しています。

【亜急性期】
⑥発症後の動脈瘤の出血部位は、フィブリン塊によって一時的に止血されていますが、血圧上昇などでこのフィブリン塊が取れてしまうと再出血をきたすことがあります。
再出血は発症後24時間以内に最も起こりやすく注意を要します。再破裂が起こると多くの場合は前述した一次損傷が顕著になり、さらに重篤な状態に陥る可能性が高いです。
このことから、再破裂は機能予後、生命予後ともに予後不良因子とされており、手術までの時間は厳重な管理が行われます。

⑦手術を終えた後でも、脳血管攣縮の発症によりさらに脳が障害を受ける可能性があります。
脳血管攣縮とは、その名の通り脳の血管の攣縮です。脳血管攣縮が起こると血管内腔が小さくなり、その血管の支配領域の脳血流量は低下し脳虚血が起こります。これが重篤な場合は、支配領域が脳梗塞を呈することも稀ではありません。
脳血管攣縮はSAH発症後に出血した血液中の成分によって引き起こされ、発症後から約72時間以降に出現し始め、8~10日をピークに2週間ほど持続するといわれています。
脳血管攣縮による全脳虚血や支配領域の脳梗塞の発症は予後に多大な影響を与えるため、これに関しても発症しないように厳重な予防管理が行われます。

【慢性期】
⑧急性期、亜急性期を乗り切れば概ね状態は安定しますが、まだ安心できません。この時期を乗り切った後は正常圧水頭症の発症に留意が必要です。
正常圧水頭症とは、脳脊髄液の循環障害や吸収障害により脳室内に髄液が溜まっていく病態です。
正常では、髄液は側脳室の脈絡叢で産生され、脳室からくも膜膜下腔・脊髄中心管を流れ最終的にくも膜顆粒で吸収されるといった流れで循環しています。

※髄液の流れ:脳室→モンロー孔→第三脳室→中脳水道→第四脳室→ルシュカ孔orマジャンディ孔→くも膜下腔・脊髄中心管→くも膜顆粒→静脈洞

くも膜下出血では、この髄液の循環経路であるくも膜下腔に血液成分が流れ出してしまい、少し時間をかけてくも膜下腔の癒着やくも膜顆粒の機能障害を引き起こすことがあり、これが脳脊髄液の循環障害や吸収障害を引き起こします。そのため、脈絡叢で産生される髄液はどんどん脳室内に溜まり、脳室もこれに伴って膨らんでいきます。
正常圧水頭症は数週間~数ヶ月後に発症頻度が多いと報告されており、急性期、亜急性期を乗り切った後でも、正常圧水頭症の臨床症状を呈していないかどうか常に注意を払う必要があります。

これらの病態の経過をまとめると以下の図のようになります。
図は以前に掲載した「脳卒中(脳損傷)の急性期で治療を始める前にまず読んでおいてください! 」の記事と同じものを使用しています。
脳卒中の急性期リハを始める前に ~くも膜下出血の病態経過~


このように、くも膜下出血は発症時の一次損傷からその後に発症する可能性のある合併症など機能予後や生命予後に直結するものが多いため、全身状態の管理に注意を払わなければならない点が多くその管理も非常に難しいです。

私たちコメディカルが各病態の管理を直接行うことはありませんが、リハ治療を投与したり、離床を行ったりする上では、患者の状態を的確に評価できていなければなりませんし、医学的管理の邪魔にだけはならないように介入を行わなければならないことを十分に考えて介入を行っていきたいものです。

くも膜下出血を発症した後の合併症の予防を含む医学的管理や臨床所見については、後の記事で触れたいと思います。

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合併症の関連図


くも膜下出血の合併症は様々な機序が関連して生じているために理解が難しいですが、以下のような関連図を見るとわかりやすいと思います。

くも膜下出血③ 発症機序、病態と経過~合併症も含めて~ 合併症の関連図 
病気がみえる(7) [ 医療情報科学研究所 ]より改変引用

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参考資料


1)病気がみえる(7) [ 医療情報科学研究所 ]
2)脳卒中理学療法の理論と技術改訂第2版 [ 原寛美 ]

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