2016/11/23

これで分かる!ギラン・バレー症候群とは何?<経過~病態~診断>






記事作成者:nocchiyan

ギラン・バレー症候群とは何か。

あまり臨床では経験しない症例だと思います。いざ担当すると何をしたらいいのかわかりません。

調べてみても同じことが書いてあり、どれをみたらいいのかわからない。欲しい情報も検索に引っかからないことが多いです。

そこで、今回はギラン・バレー症候群についてまとめてみました。

検査方法も掲載しましたので、これを上手く使って他の神経疾患とも関連付けができるようになれば良いかと思います。

なお、今回の題材に関しては情報が膨大になりますので、記事を3部に分けてお話します。



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■目次


 ▶ギラン・バレー症候群とは?
 ▶経過
 ▶臨床症状
 ▶病態
 ▶重症度分類と診断基準
 ▶終わりに
 ▶参考資料


ギラン・バレー症候群とは?


ギラン・バレー症候群のガイドラインでは、発症前4週以内に先行感染を伴う両側性弛緩性運動麻痺で、腱反射消失と比較的軽い感覚障害がみられ、脳脊髄液の蛋白細胞解離を伴い、経過予後はおおむね良好であることを特徴とする急性発症の免疫介在性多発根神経炎であると定義されています。

免疫介在性多発根神経炎、大きくいえば末梢神経障害となっていますが、これだけではピンと来ないと思います。

わかりやすく抽出してみましょう。

発症前4週以内に先行感染、脳脊髄液の蛋白細胞解離を伴う、急性発症の末梢神経障害
臨床症状は?両側性弛緩性運動麻痺 腱反射消失 感覚障害⇒末梢神経障害の一部
となります。

つまり、1ヶ月以内の先行感染と脳脊髄液の蛋白細胞解離を伴う、急性発症の両側性弛緩性運動麻痺、腱反射消失、感覚障害を認めるものがギラン・バレー症候群です。

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経過


先行感染から始まり、1~3週間後に四肢筋力低下が進行し4週間以内にピークに達します。

その後6~12ヶ月前後で軽快することが多く自然回復することから比較的予後は良好とされています。


★ギラン・バレー症候群の髄液所見
髄液所見の特徴は、髄液中の総蛋白が増えても細胞数は増加せず、蛋白細胞解離がみられることです。

髄液蛋白は発症から1~2週間後に増加を始め、3~6週間後に最高値となります。

この現象は、神経根部の浮腫と血管透過性の亢進によるものです。


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臨床症状


ギラン・バレー症候群の主症状は急性に増悪する四肢の筋力低下です。

脳神経障害は顔面神経麻痺、眼球運動麻痺、嚥下・構音障害などがあります。
また、感覚障害が多く、異常感覚はしばしばみられます。

急性期には自律神経症状を認め、症状のピーク時は、呼吸筋麻痺のため人工呼吸器が必要となります。


★ギラン・バレー症候群の自律神経障害
不整脈
高血圧(5-61%でくも膜下出血・痙攣・頭蓋内圧亢進・脳症・神経原性肺水腫を合併)
低血圧(約10%で四肢麻痺・呼吸不全・舌咽・迷走神経障害のある患者に認められる傾向)
血圧変動
心電図異常
薬剤に対する血行動態の異常反応
発汗異常
尿閉
便秘やイレウス、下痢などの消化管運動障害


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病態


ギラン・バレー症候群の病態は2つ、脱髄型(AIDP)と軸索型(AMAN)に分かれています。

その中でも、軸索型(AMAN)は運動神経が選択的に障害されるタイプ(急性運動軸索型ニューロパチー)と感覚神経の軸索も障害される急性運動・感覚軸索型ニューロパチーがあります。
 
電気生理学的検査において、脱髄型(AIDP)は末梢神経伝導速度が低下し、軸索型(AMAN)は末梢神経伝導速度が低下せずM波の振幅低下を認めます。

もう少しわかりやすくするため、脱髄型と軸索型の違いを臨床的特徴、先行感染、抗ガングリオシド抗体、神経伝導検査、経過の5項目で分けて比較した表を掲載しておきます。

これで分かる!ギラン・バレー症候群とは何?<経過~病態~診断> 軸索型ギラン・バレー症候群と脱髄型ギラン・バレー症候群の差異
表 軸索型ギラン・バレー症候群と脱髄型ギラン・バレー症候群の差異

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重症度分類と診断基準


ギラン・バレー症候群の重症度分類は以下の通りになります。

Grade0:正常
Grade1:軽微な神経症候を認める
Grade2:歩行器、またはそれに相当する支持なしで5mの歩行が可能
Grade3:歩行器、または支持があれば5mの歩行が可能
Grade4:ベッド上あるいは車椅子(支持があっても5mの歩行が不可能)
Grade5:補助換気を要する
Grade6:死亡


ギラン・バレー症候群の診断基準は①NINCDS、②Dutch GBS study group、③Hoらによる脱髄型と軸索型の電気診断基準の3つあります。

まずは、①NINCDSの診断基準です。
【診断に必要な特徴】
 A .2 肢以上の進行性筋力低下。
 B .深部腱反射の消失(すべての反射消失が原則。ただし他の所見に矛盾がなければ、上腕二頭筋反射と大腿四頭筋反射の明確な低下と遠位部の反射消失でもよい)。
【診断を強く支持する特徴】
 A .臨床的特徴(重要順)
  1  進行:筋力低下の症状は急速に進行するが、4 週までには進行は停止する(約 50%の症例で 2 週までに、80%の症例で 3 週までに、90%以上の症例で 4 週以内に症状はピークに達する)。
  2  比較的対称性:完全な左右対称性はまれだが、大抵の症例では、1 肢が障害された場合、他肢も同様に障害される。
  3  感覚障害は軽度。
  4  脳神経障害:約 50%に両側性の顔面神経麻痺を認める。他に球麻痺や外眼筋麻痺、他の脳神経症状で発症する場合がある。
  5  回復:2~4 週までには回復が始まる。回復が数か月遅れる場合もある。
  6  自律神経障害:頻脈、その他の不整脈、起立性低血圧、高血圧、血管運動症状の出現は、診断を支持する。
  7  神経症状が出現するときには発熱しない。
 B .髄液所見
  1  髄液蛋白:発症から 1 週間以降、髄液蛋白が増加しているか、経時的な腰椎穿刺で髄液蛋白の増加がみられる。
  2  髄液細胞:単核球のみで、10/mm3以下。
 C .電気生理学的所見

経過中、症例の 80%に神経伝導速度の遅延、伝導ブロックを認め、正常の 60%以下となる。遠位潜時は正常の 3 倍にまで延長していることがある。
F 波は神経幹や神経根での伝導速度の低下をよく反映する。
しかし症状は散在性であり、すべての神経が障害されるのではない。20%の症例では、伝導速度検査で正常を示す。
また、発症後数週間まで異常を示さないことがある。

NINCDS診断の特徴は2肢以上の進行性筋力低下、深部腱反射の消失が必要とされています。
この2つの所見が大前提であり、そこから、臨床的特徴、髄液所見、電気生理学的所見に分類されています。

臨床的特徴、髄液所見、電気生理学的所見は必須項目ではありませんが、重要なものほど上位に挙げられています。
当てはまる項目が多いほど、ギラン・バレー症候群であると言えます。

ただし、忘れてはいけないのが、前述したギラン・バレーの定義です。

“発症前4週以内に先行感染”“脳脊髄液の蛋白細胞解離”

この2つは定義で示されており、必ず必要であると思います。

NINCDSの診断では髄液検査はありますが、先行感染についての記載がありませんので、注意してください。



次に②Hoらによる脱髄型と軸索型の電気診断基準です。(英語の診断基準の後に日本語で訳しています。)

<英語>
AIDP:下記のいずれかひとつを2神経以上で満たす
・MCV<90%LLN(dCMAP>50%LLN)、または<85%LLN(dCMAP<50%LLN)
・DML>110%ULN(dCMAP>LLN)、または>120%LLN(dCMAP・確実な時間的文選
・minimal F latency>120%ULN
AMAN:上記診断基準を満たさず、dCMAP<80%LLN
**Haddenらの基準では、脱髄の項目に伝導ブロック(pCMAP/dCMAP ratio<0。5かつdCMAP≧20%LLN)を含む
*AMSAN:AMANの診断基準を満たした上で、SNAP<50%LLN


※略語の意味
AIDP:脱髄型  AMAN:軸索型 AMSAN:人名 DML:運動神経遠位潜時 
MCV:運動神経伝導速度 LLN:正常下限 ULN:正常上限 dCMAP:遠位刺激のCMAP振幅 pCMAP:近位刺激のCMAP振幅 CMAP:複合筋活動電位 SNAP:感覚神経活動電位


<日本語訳>
電気診断基準としては脱髄型では、下記のいずれかひとつを2神経以上で満たす場合です。
・運動神経伝導速度<90%正常下限(遠位刺激の複合筋活動電位>50%正常下限)、または<85%正常下限(遠位刺激の複合神経筋活動電位<50%正常下限)
・運動神経遠位潜時>110%正常上限(遠位刺激の複合筋活動電位>正常下限)、または>120%正常下限(遠位刺激の複合筋活動電位<正常下限)
・確実な時間的文選
・minimal F latency>120%正常上限
軸索型:上記診断基準を満たさず、遠位刺激の複合筋活動電位<80%正常下限

**Haddenらの基準では、脱髄の項目に伝導ブロック(近位刺激の複合筋活動電位/遠位刺激の複合筋活動電位 ratio<0。5かつ遠位刺激の複合筋活動電位≧20%正常下限)を含む
*AMSAN:AMANの診断基準を満たした上で、感覚神経活動電位<50%正常下限


Hoらによる脱髄型と軸索型の電気診断基準の特徴は、診断基準の名前の通り、神経伝導速度のみで診断をつけます。

この診断の問題点としては、各施設において各パラメーターの正常上限あるいは下限の設定が必要なことです。

下記に神経伝導速度の基準値を表にまとめていますので、参考にしてみてください。

これで分かる!ギラン・バレー症候群とは何?<経過~病態~診断> 運動・感覚神経伝送速度の正常値
表 運動・感覚神経伝送速度の正常値



最後に③Dutch GBS study groupの診断基準です。

この診断では、年齢や伸張を問わず正中神経31.2ms、尺骨神経32.3ms、腓骨神経59.6msを正常上限として診断をしています。

しかし、この基準値の決め方には問題があります。

それは、身長による補正が必要なことです。身長が違えば、神経の長さが変わるからです。

また、Haddenらの診断基準の伝導ブロックには部位の設定がありません。
尺骨神経肘部や脛骨神経の伝導ブロック所見を採択するかどうかは診断する医師の裁量によります。



以上の3つの診断基準を踏まえて、まとめると、NINCDSが第一候補として挙がってくると思います。

神経伝導速度の数値ばかりみるのではなく、やはり臨床家としては個々の病態の特徴を捉えて、評価・治療しなければなりません。

そして、われわれ理学療法士は評価・治療するものです。決して診断を行うわけではありませんので、まちがえないでください。


では、なぜ診断基準をここまで記載したか・・


理学療法士は毎日のように同患者を治療しているため、治療効果の判定をしなければなりません。

治療効果は筋力向上や動作能力改善でもいいですが、身体の内部の治療効果を知っていても損ではないと思います。

今回の診断基準もしくは正常値は治療効果の判定として使えるようになればいいなと思います。

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終わりに


ギラン・バレー症候群について書いていきましたが、膨大な情報があるため、今回はギラン・バレー症候群がどんな病気なのか、診断はどのようにしているかを中心に書いていきました。

次回は「治療や予後」について掲載させていただきます。

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参考資料


1)江藤,梅野,他:ギランバレー症候群に対する治療と理学療法,PTジャーナル,47(12);2013:1053-1059.
2)国分、,桑原:Guillain-Barre症候群の電気診断、臨床神経生理学,41(2);2013,4:103-111.
3)大野,三村,他:Fisher症候群19例の臨床解析,日眼会誌,119(2);2015。2:63-67.
4)野村:免疫グロブリン大量静注療法の基本とpitfall,神経治療,31(2);2014:183-187.
5)海田:Guillain-Barre症候群の予後因子,臨床神経学,53(11);2013.11:1315-1318.
6)大野:Fisher症候群,神経眼科,31(1);2014:28-35.
7)東原:Guillain-Barre症候群の自律神経障害への治療,神経治療,30(1);2013:16-21.
8)楠:ギラン・バレー症候群,検査と技術,40(1);2012:6-10.
9)森:ギラン・バレー症候群,耳喉頭頸,85(6);2013:438-442.
10)尾花:ギランバレー症候群のリハビリテーション,総合リハ,40(5);2012:680-683.

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