2016/11/28

これで分かる!ギラン・バレー症候群とは何?<治療~予後~Fisher症候群>






記事作成者:nocchiyan


ギラン・バレー症候群の第2章です。
今回はギラン・バレー症候群の「治療と予後」、そして「亜型のFisher症候群」までを解説していこうと思います。



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■目次


 ▶はじめに
 ▶治療
 ▶予後
 ▶Fisher症候群
 ▶終わりに
 ▶参考資料


はじめに


まずは、前回の記事の忘れてしまっている方もおられると思いますので、復習をしましょう。
前回は定義、経過、臨床症状、病態、診断基準のお話をしました。以下が簡単なまとめです。


前回のまとめ

【定義】ギラン・バレー症候群のガイドラインでは、発症前4週以内に先行感染を伴う両側性弛緩性運動麻痺で、腱反射消失と比較的軽い感覚障害がみられ、脳脊髄液の蛋白細胞解離を伴い、経過予後はおおむね良好であることを特徴とする急性発症の免疫介在性多発根神経炎と定義されています。

【経過】先行感染から始まり、1~3週間後に四肢筋力低下が進行し4週間以内にピークとなります。その後、症状は6~12ヶ月前後で軽快することが多く、自然回復することから予後は比較的良好な病気といわれています。

【臨床症状】ギラン・バレー症候群の主症状は急性に増悪する四肢の筋力低下です。脳神経障害は顔面神経麻痺、眼球運動麻痺、嚥下・構音障害などがあります。また、感覚障害が多く、異常感覚はしばしばみられます。急性期には自律神経症状を認め、症状のピーク時は、呼吸筋麻痺のため人工呼吸器が必要となります。

【病態】ギラン・バレー症候群の病態は2つ、脱髄型(AIDP)と軸索型(AMAN)に分かれています。

【診断基準】ギラン・バレー症候群の診断基準は①NINCDS、②Dutch GBS study group、③Hoらによる脱髄型と軸索型の電気診断基準の3つあります。

もっと詳しく知りたい方や自信がない方は前回の記事をご参照ください。
(関連記事)
これで分かる!ギラン・バレー症候群とは何?<経過~病態~診断>


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治療


ではここから、今回のメイン内容をお話していきたいとおもいます。

まずは、ギラン・バレー症候群の標準的な治療です。

標準的治療は“血栓浄化療法”“免疫グロブリン静注療法”の2つあります。

これが、ギラン・バレー症候群の治療第一選択となっています。


血栓浄化療法(PE)は、発症から7日以内に開始します。
この治療中は、循環動態の変動や留置カテーテルの血栓形成や感染などに注意が必要です。

免疫グロブリン静注療法(IVIg)は、5日間連続で点滴静注されます。
点滴静注時に血管外へ漏れてしまうと投与部位を中心に皮膚潰瘍や皮膚壊死になる可能性があります。
効果は2週間から3ヶ月続きます。



★免疫グロブリン静注療法の治療経過と副作用

・患者の免疫機構を刺激、抑制、調節することにより免疫応答機構を調節
・刺激作用として自己抗体の異化亢進作用
・開始30分以内に認められる副作用は、頭痛、悪寒、戦慄、筋肉痛、胸部苦悶感、全身倦怠感、発熱、悪心など
・重篤な副作用は、ショック、アナフィラキシー様症状、肝機能障害、無菌性髄膜炎、急性腎不全、血小板減少、肺水腫、血栓塞栓症、心不全など


血栓浄化療法と免疫グロブリン静注療法を2つ連続で行うこともあれば、片方だけ行うこともあります。
治療の順番は血栓浄化療法を行って、免疫グロブリン静注療法を実施していることが多いと思います。

治療中は副作用が強く、点滴が漏れてしまうと二次的合併症を引き起こしやすいため、治療中にリハビリを行うのは薦められません。
しかし、治療期間は2つ合わせると1~2週間程度かかりますので、仮にその間ずっとベッド安静の状態になると・・廃用症候群の進行を招きます。

廃用症候群の予防に必要な運動量に関しては以下の記事をご参照ください。
(関連記事)
脳卒中患者のリハ治療における筋力増強は十分実施できている?
筋力低下を予防するための運動量は?

この治療期間中は、治療が行われていない時間帯を狙ってリハ治療の投与を行うと良いかと思います。
私が実際に理学療法を行っている当院では、治療の時間とは別にきちんとリハビリの時間を確保していただくように看護師を調整していただくことが多いです。

病棟と連携して上手くリハ治療を進めましょう。

また、治療期間は医師も治療のためにベッド上安静の指示を出していることが多いかと思われます。

主治医に治療中の病態や経過(効果)を確認することは勿論、廃用症候群のリスクと離床を含めたメリットとデメリットをディスカッションできるような療法士であることが重要であると思います。

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予後


さて、ギラン・バレー症候群の予後または予後予測です。

ギラン・バレー症候群は病態や経過、年齢などでさまざまな因子により予後が変わります。
予後予測因子をまとめたものを以下の表にまとめていますのでご参照ください。
ギラン・バレー症候群の予後予測因子 これで分かる!ギラン・バレー症候群とは何?<治療~予後~Fisher症候群>
表 ギラン・バレー症候群の予後予測因子


予後不良になるのは高齢で、進行速度が早い軸索型の場合となります。

なお、進行速度に関しては、表の表現だけではわかりづらいと思いますので例を挙げておきます。
例)筋力低下をきたし、独歩で来院。ギラン・バレー症候群の診断するために診察、評価などを行うが、1~2日で急に歩けなくなり、呼吸がしづらくなり、人工呼吸器装着となった。

進行速度としては独歩な方が数日で呼吸器装着となるような方が予後不良因子となります。

何ヶ月前から少しずつ筋力が低下し、歩きにくくなったなどは進行速度としては遅いため、予後良好といえます。


次に、血漿交換療法あるいは免疫グロブリン静注療法(IVIg)が行われたギラン・バレー症候群の予後については以下の通りです。

※outcome:患者数 (割合)
発症後4週間:介助があれば歩行可31/172(18%)
発症後4週間:介助なしで歩行可35/172(20.3%)
発症後4週間:人工呼吸器装着44/308(14.3%)
発症後6ヶ月:介助なしで歩行可100/122(82%)
発症後1年以降:介助なしで歩行可292/347(84.1%)
発症後1年:筋力正常312/515(60.6%)
発症後1年以降:重篤な運動障害あり188/1349(13.9%)
発症後1年:relapse(再発)24/624(3.8%)
GBSのために職業を変更:31/82(37.8%)
GBS診断後1年以内に死亡:61/1391(4.4%)

こちらの予後予測で注目していただきたいところは、発症後6ヶ月と発症後1年以降のところです。

発症後6ヶ月で独歩不能例は18%、発症後1年での独歩不能例は16%であり、発症後6ヶ月を超えた以降の歩行能力の改善はほとんど得られません。

つまり、このデータからは発症から6ヶ月が歩行能力の回復の限界ということになるでしょうか。

ただし、発症後1年の時点では、筋力が完全に回復したとされる例は61%です。
この段階で十分に筋力は改善しきっていない症例が多く残っているため、これ以降も筋力の改善に伴って歩行能力も回復してくる可能性があるかもしれません。


なお、注意しなければならないことは、上記のような予後予測に対する研究のほとんどは、独歩不能例を対象として検討が行われており、軽症例は除外されています。

よって、最も症状が悪い時でも歩けるような症例は、この予後予測に当てはめて使用できないといった問題があります。

さらに、電気生理所見の解析や病型の地域差なども考慮すべき問題がたくさんあります。


現状では上述した内容がギラン・バレー症候群の予後予測因子となりますが、予後予測の研究は今後の展望に期待しましょう。

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Fisher症候群


★Fisher症候群とは?
Fisher症候群は、ギラン・バレー症候群の亜型といわれています。

Fisher症候群は、急性に発症する外眼筋麻痺運動失調深部腱反射の低下の3徴を認めます。

先行感染は、カンピロバクター・ジェジュニが関与しており、急性期には、抗ガングリオシド抗体が陽性となります。

その中でも抗GQ1b抗体が陽性となります。

これは、外転神経、滑車神経、動眼神経の髄外部のランヴィエ絞輪部周、シュワン細胞に多いです。

★発症年齢や性別、時期
Fisher症候群の発症年齢はあらゆる年代に発症します。

性別は男性に多いです。

発症する時期は、春から夏にかけて多く発症します。

★Fisher症候群診断基準(大野私案)
急性の両眼あるいは複数の外眼筋麻痺が認められ、頭部磁気共鳴画像法(MRI)で圧迫性病変・頭蓋内圧充進を含む異常が認められない症例において、大項目2つを満たす症例、もしくは大項目1つを満たし、かつ小項目1つを満たす症例となっています。

【大項目】
①抗ガングリオシド抗体陽性 
②先行感染の存在

【小項目】
①四肢のしびれ・異常感覚 
②眼瞼下垂 
③顔面神経麻痺 
④瞳孔異常 
⑤眼球運動痛 
⑥髄液の蛋白細胞解離


以上がFisher症候群についての内容になります。

ギラン・バレー症候群とFisher症候群で違う点を挙げます。

①ギラン・バレー症候群では“四肢の筋力低下、腱反射低下”
②Fisher症候群では“外眼筋麻痺による複視、運動失調”
③Fisher症候群のほうが再発しやすい。重症化を除いて予後良好。

症状や予後が違うだけであり、治療内容は他と相違ありません。

もちろん理学療法も同様です。(内容は次回の記事に掲載予定ですのでそちらをご参照ください)

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終わりに


今回はギラン・バレー症候群の治療や予後、亜型“Fisher症候群”についてのお話をしました。

ギラン・バレー症候群の治療はある程度確立したものとなっていますが、予後予測はいまだに研究段階です。

よって、この記事で書いた予後予測はあくまで一部分と捉えてもらえたらいいかなと思います。

今後の研究に期待しましょう。Fisher症候群は症状が違えど、理学療法は変わりません。

次回はギラン・バレー症候群の「理学療法評価と治療」についての記事を掲載する予定です。

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参考資料


1)江藤, 梅野,他:ギランバレー症候群に対する治療と理学療法,PTジャーナル,47(12);2013:1053-1059.
2)国分,桑原:Guillain-Barre症候群の電気診断,臨床神経生理学,41(2);2013.4:103-111.
3)大野,三村,他:Fisher症候群19例の臨床解析,日眼会誌,119(2);2015.2:63-67.
4)野村:免疫グロブリン大量静注療法の基本とpitfall,神経治療,31(2);2014:183-187.
5)海田:Guillain-Barre症候群の予後因子,臨床神経学、53(11);2013.11:1315-1318.
6)大野:Fisher症候群,神経眼科,31(1);2014:28-35.
7)東原:Guillain-Barre症候群の自律神経障害への治療,神経治療,30(1);2013:16-21.
8)楠:ギラン・バレー症候群,検査と技術,40(1);2012:6-10.
9)森:ギラン・バレー症候群,耳喉頭頸,85(6);2013:438-442.
10)尾花:43.ギランバレー症候群のリハビリテーション,総合リハ,40(5);2012:680-683.

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