2016/01/05

高齢者の筋力低下の特徴から分かる効果的なトレーニングに関する知見






今回は、高齢者の筋力低下の特徴を把握し、どのようなところに着目してトレーニングをすれば良いかを考えてみたいと思います。




■目次


 ▶高齢者の筋力低下の特徴
 ▶加齢に伴う筋力低下がいけない理由
 ▶筋力低下を引き起こし易い部位と筋力増強の対象部位
 ▶参考資料



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高齢者の筋力低下の特徴



一般的に、加齢に伴う筋力低下には以下のような特徴があると言われています。
○神経的要因が関与
・最大収縮時における主動筋の筋放電量の低下
・拮抗筋の共同収縮の増加
○typeⅡ線維(速筋線維)の萎縮が起こる
・運動ニューロンの減少や脱落
・運動終盤の変性
・遺伝的因子
○上肢よりも下肢で低下率が大きい

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加齢に伴う筋力低下がいけない理由


筋力と動作能力の関連性は高いことが報告されており、米国老年学会ガイドラインでは、筋力低下は転倒に対する危険性が最も高い内的因子とされています(以下図参照:文献2より改変引用)。
米国老年ガイドラインにおける転倒の内的危険因子

転倒と運動機能との関連では、特に膝関節伸展筋力の関連がよく報告されており、膝伸展筋力は0.84Nm/kgを下回ると転倒の危険性(オッズ比)が5.7倍高くなると報告されている。

つまり、筋力低下が進行すると転倒リスクが高まるということになります。

高齢者の転倒に伴う外傷(大腿骨頚部骨折など)の発症は、介護や寝たきりを引き起こす原因にもなるとされていますので、これを発症しないように高齢者の筋力低下を予防することは重要であるといえます。

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筋力低下を引き起こし易い部位と筋力増強の対象部位


高齢者の筋力低下を予防しようと考えた時、高齢者が筋力低下を起こしやすい部位や、筋力低下を起こすと生活に影響を及ぼし易い部位を知っていれば効果的に介入が可能になるのではないでしょうか。

以下の高齢者の筋厚を若年者と比較した研究より、対象すべき筋力増強の部位が異なることがわかります。

○加齢により筋萎縮が最も顕著な筋は、下肢では大腰筋(若年者の筋厚の47.2%まで低下)、体幹では腹斜筋群(若年者の筋厚の52.4~59.8%まで低下)であった。
 →老化予防には、大腰筋、腹斜筋の強化
○歩行が自立している群を対象とした場合、生活活動量と下肢筋では中臀筋のみが関連性がある。つまり、側方不安定性が容易に生活活動量の減少や行動範囲の狭小化を招き、さらに下肢筋量を低下させる悪循環を招く。
→生活活動量の維持や向上のためには、中臀筋の強化
○下肢筋と歩行自立度の関連では、若年者群と高齢歩行可能群の比較でヒラメ筋の筋厚に有意な差はないが、若年群と高齢歩行不可能(半年以上歩行をしていない)群との間に差があった。つまり、日常生活で歩行が自立していればヒラメ筋の筋量は維持できるが、歩行しなくなるとヒラメ筋は萎縮するといえる。また、若年群に対する筋厚低下率をみた場合、歩行不可能群では、特に外側広筋・大腿直筋・中間広筋の筋厚低下率が78.2-83.0%と顕著な低下を示した。つまり、長期間歩行が困難な高齢者では、大腿四頭筋の廃用性萎縮が顕著に進行するといえる。
 →歩行能力低下予防のためには、歩行が困難になると萎縮がみられるヒラメ筋や大腿四頭筋の強化
○体幹筋群と日常生活自立度に着目した場合、高齢者で起居移動動作に介助が必要な群(座位保持も不可能である長期臥床者)では、若年者や高齢自立群よりも腹横筋や多裂筋の筋量が有意に低値を示した。つまり、起居移動動作が自立していると腹横筋や多裂筋の筋量を維持できるが、介助が必要になり長期臥床することでこれらの深層筋は萎縮する。
 →起居移動動作の維持や寝たきりの予防には、腹横筋や多裂筋の強化

上記をまとめると以下のようなイメージ図になるかと思われます。
高齢者の筋力低下による生活範囲の縮小化のイメージ図

高齢者の介護予防を目的としたトレーニングは、日常生活動作能力や生活活動量と関連が強い筋群や、加齢による筋萎縮が著しい筋を中心に実施すると良いです。

下肢筋力と移動動作能力は強い関連性があると報告されていますが、下肢筋力が強い群では動作速度と筋力に関連性は見られないことも報告されています。このような場合には、下肢筋力強化に体幹筋筋力強化を加えたトレーニングを行うと、最大歩行速度や1日の歩行時間が増大することも報告されています。

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参考資料


1)池添冬芽:高齢者のリハビリテーション 筋力低下.総合リハ.2014;42(11):1039-1045.
2)American Geriatrics Society, British Geriatrics Society, and American Academy of Orthopaedic Surgeons Panel on Falls Prevention: Guideline for the prevention of falls in older persons. J Am Geriatr Soc.2001; 49:664-672.
3)運動療法学第2版 [ 市橋則明 ]:障害別アプローチの理論と実際,文光堂,2014 
 Summary>各障害別に生理病態、評価~治療の実際までがエビデンスを基盤として幅広く掲載されている。各アプローチの作用機序までは詳細に掲載されていない箇所があるものの、一冊あればリハを行う中で遭遇する疾患への代表的な治療の基本がわかる。

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